USA。たいていの人は「アメリカ合衆国」を思い浮かべようが、この人が建国を夢みる国では、このAはアフリカ。即(すなわ)ち「アフリカ合衆国」である▼リビアの最高指導者カダフィ大佐。歯に衣(きぬ)着せぬ言動など独特のスタイルを持つ人物だが、この九月、国連総会出席のため、既に存在している方のUSA、つまり米国を訪問する。大量破壊兵器の開発計画放棄で、もはや米国のテロ支援国家指定は解除されているが、その際の滞在場所が今、問題になっている▼ホテル派とか旅館派とか、泊まる場所にこだわりがある人もいるが、大佐の場合は「テント派」だ。外遊先では遊牧民のテントを設営するのが常。例えば昨年十一月、ロシアを訪れた際も、寒さや警備上の問題から難色を示したロシア側を押しきり、クレムリンの庭にテントを張った▼米国でも、当然テントだが、設営場所が問題。特派員電によれば、ニュージャージー州にあるリビア政府所有地が候補だが、地元市長らから猛反発が起きている▼一九八八年のパンナム機爆破事件で終身刑になったリビアの元情報機関員が末期がんを理由に英スコットランドの刑務所から釈放されたのは、つい先日。同州には事件の犠牲者が多く、その人物を「英雄」として迎えたことが許し難いようだ▼今度ばかりは大佐も、自分のスタイルを曲げざるを得ないかもしれない。