通勤電車のロングシートは7人掛けだ。新型インフルエンザが上陸した今年の5月ごろ、車内を見渡すとそこにマスクをしている乗客が必ず1人はいた。2人3人は当たり前。7人全員がずらりマスク姿、という光景にも見覚えがある。
▼あれはどうなってしまったのだろう。当時とは比較にならない本格的な流行だというのに、そういう景色を見ない。もちろんマスクの効果は限られているし、むしろ手洗いやうがいに精を出している人が多いようだ。とはいえ、やはり気にかかる。恐怖がいったん通り過ぎ、緩んだ気持ちはなかなか元に戻らない。
▼そうこうしているうちに新学期が始まる。学校という場所がいかに危ういかは、すでに新学期を迎えた北海道で集団感染が急増しているのをみても明らかだ。素早い学級閉鎖や学年閉鎖、休校が欠かせないはずだが、その基準のない地域も多いという。ウイルスは人間たちの備えが整うのを待っていてはくれまい。
▼やがては世界の人口の3割が感染するという新型である。季節性のインフルを大きく上回る流行は避けられないらしい。ならばその流行の山をなだらかに抑え、混乱を防ぐのが道だろう。重症患者が続出しているのに病院が手いっぱい、では困る。パニックは禁物。しかし数カ月前の「初心」を思い出してもいい。