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天声人語

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2009年8月28日(金)付

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 気象予報官にもタイプがあって、その昔は「屋上派」と「地下室派」がいたそうだ。気象予報士の森田正光さんが、鹿児島気象台長だった倉嶋厚さんから聞いたという話を小紙に寄せていた▼屋上派は屋上で空を眺め、風を確かめる。実況に照らしてデータを修正して予報を出す。片や地下室派は、部屋にこもって資料とにらめっこをする。解析技術は高いが、降っているのに「晴れ」と予報するぐらい実況には無頓着な人たちなのだそうだ▼相通じる話を、免疫学者の多田富雄さんが書いていた(読売新聞)。医者がパソコンばかり眺めて、患者の顔を見て診察しない。数値に頼って患者の訴えを聞かない。多田さんによれば科学的根拠に基づく医療が行きすぎたゆえの問題らしい▼その反省から「ナラティブ・ベイスト・メディシン」というのが提唱されているそうだ。訳せば「物語に基づく医療」となる。聞き慣れないが、つまりは話をよく聞き、「ひとりの人間としての患者」を忘れない医療である▼結構な話だが、医師のコミュニケーション能力は大丈夫かと心配になる。最近、ある医学部を見学した人が驚いていた。「患者ロボット」を相手に問診の訓練をするのだという。なぜロボットなのかと聞くと、人との対話が得意でない学生もいますから、などと説明があったそうだ▼その大学が「最先端」なのかもしれないが、ひょっとしてそんな流れなのだろうか。病という難事において人生という物語を共有してくれる、「屋上派の医師」がもっと育てばいいのだけれど。

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