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社説2 国民審査を意味あるものに(8/27)

 「国民審査によって罷免された裁判官は1人もおらず、この制度の意義を疑う議論もある」。こんなふうに解説する法律事典がある。

 しかし最高裁裁判官の国民審査は任命の適否を有権者が直接判断する、国民主権を保障した大事な制度だ。制度の骨格をなす「任命後最初の総選挙の際と、その後10年ごと」「罷免票が多数であれば罷免される」――の2点は憲法を改正しないと変えられないが、意味ある制度にするために改善の余地は多い。

 まず審査対象の裁判官にまつわる情報の開示・提供が少なすぎる。

 選挙管理委員会が配る公報は不十分な内容しかなく、それも目を通す有権者が多いとは思えない。総選挙立候補者の政見放送のように、裁判官が心構えや信条、経歴などを自分の言葉で語る機会があってもよいのではないか。

 任命後しばらくたった裁判官は、最高裁でどういう裁判をしたかが重要な情報になる。社会に影響が大きい裁判は新聞で個別意見まで報じるし、最高裁のホームページを見れば裁判官ごとに関与した裁判の判決文などが確かめられる。

 ただ判決文などは現在の公報にはとても掲載しきれない。せっかく元のデータは整っているのだから、膨大な情報でも簡単に提供できるインターネットの特性を利用する公報の手法を考えてはどうだろう。

 最高裁入りして日が浅く、裁判例がわずかな裁判官の情報はもっと少ない。経歴や人物像と並ぶ判断材料になる、任命にいたる経緯・背景が現状では明かされないのだ。

 そもそも国民審査を定めた憲法79条は「最高裁判所の裁判官の任命」を国民の審査に付す、と規定しているのだから、任命の経緯・背景が国民に知らされないのはおかしい。司法制度改革審議会の意見書(2001年)も「選任過程について透明性・客観性を確保するための適切な措置」を求めている。かつて国会で議論した任命諮問委員会の創設なども再度検討に値するのではないか。

 総選挙の期日前投票は公示の翌日からできるのに、国民審査は投票用紙の調製に時間がかかるとの理由で投票日の1週間前にならないと受け付けないのも、改善が要る。

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