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天声人語

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2009年8月27日(木)付

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 「秋」という言葉は、実り豊かなイメージの奥に凋落(ちょうらく)の響きを宿す。「秋扇(しゅうせん)」といえば、夏には重宝された扇が、秋風とともに打ち捨てられて顧みられなくなる悲哀を言う。その、人心の離れた秋の扇さながらに、自民党の苦戦は甚だしい▼小紙が行った選挙中盤の情勢調査では、100議席に届くかどうかという厳しさである。「民主大勝」の下馬評への揺り戻しがあるかと思われたが、民意は非自民で高止まりしたままらしい▼4年前の郵政選挙を裏返したような情勢に、軍書『甲陽軍鑑』の一節が浮かぶ。「九分十分(くぶじゅうぶ)の勝ちは、味方大負けの下作(したつくり)なり」。大勝というのはくせ者で、驕(おご)りや慢心が後に大敗を招く。だから勝ちは六、七分でいいという、武田信玄の言である▼圧勝の遺産にしがみついて食いつなぐ与党に、嫌気のさした人は少なくなかった。うわずった末に「小泉劇場の正体見たり」の4年でもあっただろう。名将の言うとおり、巨大議席を得た大勝ちの中に、すでに凋落の芽は潜んでいたようである▼だが、その合わせ鏡は民主党を映してもいる。優勢ぶりに比べて政策への評価は低く、仮に大勝してもすぐ秋風が吹きかねない。しかし考えてみれば、いずれの与党も「秋の扇」となって下野する緊張感の中でこそ、政治は営まれるべきだろう▼そうした「国政のかたち」に道をつけるかもしれない選挙である。今回の民意は「風」というより、もっと質量のある「水の流れ」のように思われる。政治を鍛える力をしっかりつけた、それぞれの一票でありたい。

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