報道番組「真相報道バンキシャ!」の誤報問題で、日本テレビは二度にわたって検証番組を放送した。しかし、検証というには物足りない内容だった。これで視聴者の信頼を取り戻すのは難しい。
「バンキシャ!」の誤報は昨年十一月に放送された。情報提供者として登場した元土木建設会社役員という男の「岐阜県の土木事務所が架空工事を発注して裏金をつくっている」という証言は、すべて作り話だった。
放送倫理・番組向上機構(BPO)が検証番組を放送するよう勧告したため、日本テレビは二十三日夕方の「バンキシャ!」内で検証特集を、二十四日午前零時五十分からは検証番組を流した。
まず、検証番組を未明に放送したことが理解できない。前日夕の検証特集とほとんど変わらず、再放送のようだった。特集に続いて検証番組を視聴した人はだまされた気分になったのではないか。
内容も、検証としては物足りなかった。「裏付け取材を怠ったのは致命的ミス」「チームのコミュニケーションが欠けていた」との関係者による反省の弁はすでにBPOの勧告で指摘されている。
男が示した「入出金記録」はどう見てもパソコンで作成されており、裏金の証拠といえるようなものではない。「情報源の秘匿」との主張も岐阜県側を取材しなかった理由にはならない。視聴者の疑問は取り払われていない。
取材力の不足とチェック機能の欠如があらためて確認されたが、これは制作会社とテレビ局の関係に起因する問題ではないのか。
現場取材は制作会社に任されていたようだ。「放送日ありき」では時間や人員の制約から取材が不十分な場合も生じよう。だが、会社の経営を考えれば「できなかった」では済まされないはずだ。
一方、テレビ局が制作されたものをしっかり点検する機会や能力がなかったらどうなるか。放送を決める最終検討会議に、取材した制作会社社員が欠席だったというのはその一端を示している。
視聴率との関係ではどうだったのか。報道はドラマやバラエティーとは本質的に異なる。同じものさしで報道番組を作ってはいなかったか。
謝礼の支払いをうかがわせて情報提供を呼び掛けた行為は報道のあるべき姿勢ではない。
検証番組には制作会社を取り巻く環境や制作体制を問う場面はなかった。再度、検証番組を作って真相に踏み込んではどうか。
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