朝晩の空気がひんやりし、秋の気配を感じるようになった。心なしか元気がなかった田んぼの稲も、背筋が伸びたような気がする。
岡山県南では、風に揺れる青田の波がすがすがしい。あの人たちの目にはどう映っているだろうか。衆院選の候補者である。単なる「票田」でなければよいが。
「日本の農業を守ります」。おなじみのフレーズが選挙カーから聞こえてくる。選挙の度に感じるのは、農業に関しては各党とも主張に大きな違いがないことだ。全国一律的な保護政策が目立つ。
その結果、日本の農業はどうなってきたか。農家の高齢化は進むばかりで、担い手不足も著しい。生産力は徐々に弱体化し、青田の中に雑草が生い茂る耕作放棄地が増えている。
足腰の強い専業農家が育ちにくい環境のせいだろう。構造改革の失敗といえる。経済のグローバル化が避けられない以上、求められるのは農業の国際化をどう進め、日本ならではの競争力をいかに強化するかという視点ではないか。
民主党は日米の自由貿易協定(FTA)交渉問題で、農業団体などの反発を受けて積極姿勢を後退させた。これで大きな争点はなくなり、またもや各党とも内向きな保護政策の競い合い状態になった。多くの若者が農業に挑戦しようという気になるだろうか。