農林水産省が発表した2008年度の食料自給率(カロリー基準)は41%で、2年連続の上昇となった。07、08年度とも1ポイントの改善だが、いずれも農産物の国際価格上昇による輸入減少の影響が大きく、本格的な自給率向上にはほど遠い。
08年度の上昇の中身をみると寄与度2番目の畜産物の場合、価格の上昇によりチーズの輸入が減ったことが大きかった。寄与度トップの砂糖類はサトウキビ産地の沖縄県などで台風被害がたまたま例年より少なく、自給率が高まった。主役であるコメ消費は、不況ですしが減りハンバーガーが増えたことなどでむしろ縮小した。
数字的にもわずかな上昇で、依然自給率は主要先進国中最低の水準にある。数値が浮き彫りにしているのは日本農業の足腰の弱さであり、問題はいかに農業を立て直すかだ。
農業に関し、自民党は総選挙に向けたマニフェストで、自給率を50%に引き上げるとした。だが、具体策についてはあいまいなままだ。一方の民主党は農家への戸別所得補償制度を看板政策として掲げる。米国や欧州の農業政策と同じ方向性だが、一律的な補償ではばらまき批判を免れまい。
農業就業人口は05年に1960年の4分の1に減り、65歳以上が6割を占める。農業の現状に照らす時、各党の主張は表面的、対症療法的な印象がぬぐえない。農産物自由化も難題で、民主党は農業団体などの反発から日米自由貿易協定(FTA)に関する公約を修正した。
抜本的な農業強化策を探らなければならない。もとより困難な課題ではあるが、企業の農業参入など新たな試みが始まり、農地の流動化も議論されつつある。二大政党を軸に真(しん)摯(し)な取り組みが求められる。