HTTP/1.0 200 OK Age: 1 Accept-Ranges: bytes Date: Tue, 25 Aug 2009 20:21:11 GMT Content-Length: 7641 Content-Type: text/html Connection: keep-alive Proxy-Connection: keep-alive Server: Zeus/4.2 Last-Modified: Mon, 24 Aug 2009 14:36:01 GMT NIKKEI NET(日経ネット):社説・春秋−日本経済新聞の社説、1面コラムの春秋

音声ブラウザ専用。こちらより記事見出しへ移動可能です。クリック。

音声ブラウザ専用。こちらより検索フォームへ移動可能です。クリック。

NIKKEI NET

春秋(8/25)

 中学校のベテランの先生がテストの答案に○×をつけて生徒に返しながら、得意げに話しかけた。「僕は採点には自信がある。教師になって以来、ミスして君たちに何か言われたのは一度だけなんだ」。しばしのあと生徒から一言ある。

▼「×のはずが○だったら誰も言ってきませんから」。40年前に教室で体験した「先生やりこめられる」の図である。もっとも、仏文学者の辰野隆(ゆたか)は旧制中学で「丙」専門だった作文に突如「甲」がついて驚き、「間違いではないか」とわざわざ教師に確かめた。古今の中学生、こましゃくれていたばかりではない。

▼ことしは学校の夏休みと衆院解散から総選挙までの40日間が重なった。その夏休み最後の日曜に「採点」の日を迎える。30日まで各党や候補者の答案を吟味するもよし。必要なら期日前投票もある。要は、テストを採点するのが先生の仕事であるように、我々も有権者の役割を果たさねばならぬということだろう。

▼辰野は幸い「甲は間違いでない」というお墨付きをもらった。うれしかったに違いない。50年近くもたって、作文の題は「志望」だったと随想で触れている。「甲」1つが人生になにがしかをもたらす。まして今回の選挙が日本にもたらす「何か」の大きさは言わずもがな。そう思えばミスなどしまいと力が入る。

社説・春秋記事一覧