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社説

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09総選挙 年金再建―対立超え安心の制度を

 現在の制度を維持するか、税方式に転換するかで与野党が対立してきた年金制度改革。総選挙を通じて、論争に変化の兆しが出てきた。

 「今の制度は百年安心」としてきた与党側が、さすがに制度のほころびを認め、年金を受けるのに必要な最低加入期間を現行の25年から10年に短縮することや、無年金・低年金者対策に取り組むと言い出した。

 一方、税財源による最低保障年金を主張してきた野党側も、民主党が基本はあくまでも全国民が入る所得比例年金であり、社会保険方式であることを明確にした。最低保障年金は、年金額の少ない人のための補完的な役割で、新たに歳入庁をつくって保険料の徴収を徹底する、との考えだ。

 共通しているのは、広がる保険料の未納を食い止めなければいけない、無年金・低年金の人への手立てが必要だ、という問題意識だ。

 自営業者が中心と考えられてきた国民年金は今や、加入者の4割が非正社員を中心として雇われている人たちだ。こうした人たちには定額保険料の負担感は大きく、保険料の未納が広がる一因と言われている。

 一方、満額で月6万6千円と言われる国民年金の平均受給額は4万8千円。現役世代が減って収入が減ったり、平均寿命が延びて給付総額が膨らんだりすれば、毎月の受給額はさらに目減りする仕組みになっていて、最低保障の底が抜けている状態だ。

 今の制度が抱えるこうした問題点をどう解決していくのか。手法になお隔たりはあるものの、大きな見直しの方向は同じなのだから、話し合いの余地はあるはずだ。

 与野党とも、詰め切れていない問題が目立つ。与党の無年金・低年金対策は、どんな人たちにどれくらいの年金額を保障するのか。民主党の改革案は、自営業の人たちの保険料をどうするのか。新制度への移行期間中、すでに無年金・低年金の人たちをどうするか。いずれもあいまいだ。

 負担と給付の公平性を担保するには、納税者番号制を導入して正確な所得を把握することも必要だ。また、これから超高齢社会を迎え、医療や介護の費用も膨らむ。そうした社会保障費の見通しも踏まえて、年金改革にどれだけの財源を充てるのか。総合的な判断が求められる。

 だからこそ各党は、選挙後に国民的な議論を始められるよう、早期に協議の場をつくる方向で努力すべきだ。

 年金制度は長期にわたる安定が必要だ。選挙のたびに仕組みが変わるのでは、国民が不利益をこうむる。

 どの政党が政権を担うにせよ、高齢社会の安心の土台となる年金制度をつくることは政治全体の責任だ。対立を超えた建設的な議論を望みたい。

最高裁国民審査―開かれた選任こそ課題だ

 最高裁裁判官を信認するかどうかを問う国民審査が、総選挙と同時に行われる。司法への信頼を国民が直接表明できる唯一の機会だ。政権選択を機に国や政府の形が議論されている今、最高裁の人事についても考えたい。

 憲法に基づく制度だが、これまでに国民審査で辞めさせられた人は一人もいない。審査の対象になるのは任命後に初めて行われる総選挙の時で、次の機会は10年を経過したあとの総選挙までない。ところが、就任年齢は通例60歳を過ぎていて、70歳の定年までに再度、審査の対象になることは事実上ない。結局、対象の裁判官は就任から間がない人が多くなる。

 今回、対象の9人のうち竹崎長官を含む5人は、まだ一度も違憲判断や判例変更ができる大法廷判決に関与していない。判断の材料が乏しすぎる。

 いや、国民審査の形骸(けいがい)化より基本的な問題は、彼らが国民からまったく見えない密室の中で選ばれてきていることではあるまいか。

 最高裁長官は内閣の指名に基づいて天皇が任命し、14人の最高裁判事は内閣が任命する。しかし実際は、長官については現職が後任を首相に推薦し、内閣が尊重する。判事については、法律家出身者の後任は最高裁が推薦し、官僚出身者の後任は内閣が候補者を絞る。それが慣例となってきた。

 選考過程は一切国民の前に明らかにされず、ある日突然、内閣が「決まりました」と発表するのだ。

 その結果、最高裁長官は現長官まで9代続いて裁判官出身。判事も裁判官、検察官、弁護士、官僚、法学者の人数枠が固定され、出身母体からの順送り人事となってきた。

 どんな仕事をしてきた人がどんな理由で選ばれたのか、国民は知らされない。国民審査が形骸化している根本的な原因はこうしたことにある。

 密室人事を透明にすることは、憲法の番人として国会や政府をチェックする最高裁を、国民的な合意に立って作り上げていくうえで極めて重要だ。

 司法制度改革審議会も01年の意見書で、最高裁人事について「選任過程に透明性・客観性を持たせることを検討すべきだ」と提言した。

 法曹界や衆参両院、学識経験者らで構成する諮問委員会を設け、複数の候補者を内閣に答申する。そんな改革案が国会に提出されたこともあった。

 改革の具体化は、政治が真剣に取り組むべきテーマだ。政党側にこの問題を真剣に取り組もうという気配がないのは、残念としかいいようがない。

 司法を国民に開かれたものにするため、裁判員裁判が始まった。司法を支える国民的基盤を築くために、最高裁長官と判事の選任過程を公開する。それを通じて、国民審査にも十分な情報を開示することだ。

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