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天声人語

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2009年8月25日(火)付

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 豊かな水が大地を潤す。日本では普通に見る景色のありがたさを、ペシャワール会(本部・福岡)のDVD「アフガンに命の水を」を見て思った。最貧の国で26年にわたって支援を続けてきたNGOの報告である▼医師の中村哲さんを中心に、もとは医療活動にかかわっていた。やがて井戸を掘り、農業指導へと幅を広げていく。「飢えや渇きは薬では治せない」と痛感したからだ。今月3日には、乾ききった大地に全長24キロの用水路を作りあげた▼6年がかりの工事の様子を、映像は伝える。人海戦術で掘り進み、伝統の石積み法で岸を固めていった。2年前に約半分が完成して通水した。潤った土地にいま、青々と麦がそよぐ。「日本人」に感謝する村の古老の笑顔がいい▼戦乱と干ばつの続くアフガニスタンは、さしずめ「人災と天災の荒野」だという。祖国の荒廃は人の心も荒(すさ)ませる。最悪の治安の中で、村人に守られて指導を続ける中村さんの姿に胸を打たれる▼この国を舞台に映画を撮ったイラン人監督、モフセン・マフマルバフ氏の著書にこうあった。「もしも人びとの足もとに埋められたのが地雷ではなく小麦の種であったなら、数百万のアフガン人が死と難民への道を辿(たど)らずにすんだでしょう」。同じ思いが、会の人にも流れていることだろう▼スタッフのひとり伊藤和也さんが殺害されて明日で1年になる。しかし夜明けはまだ遠く、米国は増派を進めている。腕力頼みの荒療治だけではない、「アフガン復興」に向ける志を、かの国の政治家にも聞いてみたい。

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