今や時代の必然ともなった地方分権は、自民党や民主党の重要な政権公約になった。しかし、その中身はこれまで有言不実行だったことばかりだ。政策の実現は、新政権の「やる気」次第だ。
これまでに道州制を掲げてきた自民党は「二〇一七年までに導入」と初めて具体的な時期を示した。民主党は都道府県は残し、住民に最も身近な市町村へ大幅に権限を移譲すると公約した。
さらに、自民党は補助金や税配分の見直しなど「新地方分権一括法案」の成立を急ぐとし、民主党は国が使途を決めた「ひも付き補助金」をやめ、地方が自由に使える「一括交付金」にするという。
両党ともいつになく地方分権に熱心だが、過激な物言いながら住民の支持も集める橋下徹大阪府知事らの主張を次々とのみ込んだようにもみえる。
両党の公約に結局は入った「法律に基づく国と地方の協議の場の設置」はその一例だ。当初書いていなかった民主党は、橋下知事に不満を漏らされると、全国知事会が開いた公開討論会の場で「追記する」とすぐに修正した。
こんな民主党を自民党も笑えない。ずっと政権党でありながら実績が上げられなかったのに、今さら大胆な公約を口にしても説得力がどれほどあるのか。
地方分権は知事ではなく、住民のためであるのは言うまでもない。深刻な医師不足や過疎の村の問題などで、住民に政治を近づけ暮らしをよくする手段のはずだ。
全国知事会の二十九知事が行ったマニフェスト採点では、自民党が民主党をわずかに上回った。知事会の求め通りに現在1%分の地方消費税の引き上げに触れた自民党が「地方財源の確保」の項目で高評価だったためだ。知事らの採点と県民の受け止めの差は、それこそ選挙の結果としてすぐに表れるだろう。
地方が疲弊する中、これ以上の地方分権の先延ばしは許されない。自民党の道州制には、区割りをめぐる地域対立や、小県が大県に吸収される不安など反発も少なくない。民主党の一括交付金化でも国の「仕送り」頼みという構造は変わらず、中央が地方に口を挟み続ける恐れもある。
せっかくの公約も、実現には多くの難問が待ち構える。これまでの政権にはない強い思いと実行力が欠かせない。住民が何を求めているかを知り、政策に反映させられる真の地方分権を求めたい。
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