HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 24 Aug 2009 03:18:47 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:孤立無援の絶望のふちで、一筋の光明を見いだすのはどんな時だ…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2009年8月24日

 孤立無援の絶望のふちで、一筋の光明を見いだすのはどんな時だろうか。彼にとっては、自分を信じてくれる人が初めて現れた瞬間だった▼十七年半ぶりに釈放された足利事件の元受刑者菅家利和さん(62)が、「命の恩人」と呼ぶ女性がいる。栃木県足利市の主婦西巻糸子さんだ。最近発売された著書『冤罪(えんざい) ある日、私は犯人にされた』にその経緯が詳しく書かれている▼逮捕後、無実を訴える手紙を書いても母親からは返事は一通もない。見捨てられたという失意の底で、西巻さんからの手紙が届く。幼稚園のバスの運転手をしていた彼女は、面会時に言った。「同じ仕事をしている人が、子どもを殺すとは思えない」▼厳しい取り調べを受けた刑事や検察官を恐れ、菅家さんは裁判でも真実を語れなかった。でも、思い直した。助けてくれる人がいるならもっと頑張ってみよう。無期懲役の論告求刑を受けた後、勇気を振り絞って、弁護士に「私はやってません」と手紙を出し、一審の最終段階で否認に転じた▼控訴審での新しい弁護人探しにも奔走し、長い法廷闘争を陰で支えた女性に対し、菅家さんは「西巻さんがいなければ、自分は八十歳を過ぎても塀の中にいたと思います」と告白している▼絶望の中からも希望は生まれる。たった一人でも理解者がいれば、人間は希望を抱いて生きていける存在なのだろう。

 

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