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社説1 レアメタル確保へ備蓄・開発の強化急げ(8/23)

 経済産業省は希少金属(レアメタル)の安定確保に向け、備蓄やリサイクル、資源開発などを柱とする強化策をまとめた。ほぼ全量を輸入に頼るレアメタルはハイブリッド車、電気自動車など日本の成長を担う製品に欠かせない。新戦略も十分とはいえず、一段の強化を求めたい。

 ここ数年で需要が急増したレアメタルには、液晶テレビに使うインジウムや発光ダイオード向けのガリウム、ハイブリッド車の駆動モーターをはじめ高性能磁石原料の希土類などがある。

 ネオジムなど希土類と呼ばれる鉱物の産出は、中国が世界の97%を握る。しかし中国は鉱石の輸出を抑制し、自国で付加価値の高い製品にする戦略を進める。輸入が不足すれば自動車だけではなく、パソコンのハードディスク駆動装置(HDD)、洗濯機など高性能磁石を使う幅広い製品に影響する。

 だが1983年に始まった希少金属の備蓄制度は、鉄鋼生産に使う7金属を対象にしており、コバルトも最近の需要変化でリチウムイオン電池などの比重が高まったにすぎない。産業構造の変化や省エネルギー型商品の成長に合わせ、対象品目の見直しと備蓄量の拡大は急務だ。

 経産省の強化策は、インジウムとガリウムを備蓄対象に加えたものの、希土類や自動車の排ガス処理触媒に使うプラチナなどは検討品目にとどまる。地球環境に配慮した自動車や家電製品を経済成長のけん引役と位置づける一方で、政府は生産の根幹を揺るがしかねない資源不足への危機感が足りない。

 中国は希少金属など資源備蓄の目的を「国家非常事態に備える」とし、企業買収などで海外の権益確保も急ぐ。だがインジウム消費の世界シェアが8割に及ぶ希少金属の輸入大国でありながら、日本の確保戦略は甘さが否めない。民間企業がどれだけ保有しているのか、在庫統計さえない金属が多いのは問題だ。

 住友商事がカザフスタンでウラン鉱石から希土類を取り出す事業に参入するなど企業主導で資源確保の動きは進む。ただ市場規模が小さい割に投資額は大きく、地政学リスクも負う希少金属の資源開発に政府支援は欠かせない。

 強化策はリサイクルの推進も盛り込んだものの、現状で採算の合う金属は価格の高い金、プラチナなどに限られ、官民協力して回収・再利用の効率向上を急ぐ必要がある。昨年後半に下落した主要金属の価格は再び上昇し始めた。確保戦略で最も重要なのは実行のスピードだ。

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