5年ぶりに行われたアフガニスタンの大統領選挙は、約30万人の治安要員を配置したにもかかわらず、イスラム原理主義の反政府武装勢力タリバンによるとみられる妨害が相次いだ。治安の確立がなお最大の課題であることが浮き彫りになった。
タリバンは20日の投票に先立って「選挙を破壊する」との宣言を繰り返していた。「投票すれば危害を加える」と有権者を直接脅迫した例もあったという。
これに対し、米オバマ政権の兵力増派で10万人に達した多国籍治安部隊とアフガニスタン軍など国内の治安要員およそ20万人が、主に各地の投票所周辺に配備された。それでも20日には全国135カ所の投票所が攻撃を受け、26人の死者が出た。
全国6519の投票所のうち順調に投票ができたのは6199にとどまった。史上初めての大統領直接選挙で投票率が70%に達した前回に比べると有権者の出足は悪く、投票時間は急きょ1時間延長された。
タリバンの妨害は一定の効果をあげたようにみえる。しかし「選挙の破壊」と言えるほどの混乱はなかった。投票所に足を運んだ有権者の勇気をたたえたい。
開票・集計作業の安全も懸念されており、大勢判明は22日以降になる見通し。カルザイ大統領の再選が有力だが、アブドラ元外相との決選投票にもつれ込む可能性もある。いずれにせよ、次期政権は米国をはじめ国際社会と連携し治安の確立に最優先で取り組まなくてはならない。
オバマ政権は一層の増派を視野に入れている。前回選挙の後にタリバンが大きく勢力を回復した原因を踏まえ、武力以外の対策にも力を入れる必要があろう。戦闘などにともなう民間人の被害の抑制・救済や腐敗の撲滅、何よりも雇用の創出につながる経済の立て直しが重要だ。
米国内の世論調査ではアフガニスタン戦争に否定的な意見が初めて過半数に達した。成果をあげないとオバマ政権の指導力が揺らぎ世界情勢は一段と流動化しかねない。
日本は米英に次ぐアフガニスタン支援国だ。30日の総選挙で圧勝する勢いの民主党はインド洋での給油延長に消極的だが、ここで日米同盟がぐらつけば影響は深刻だ。