四〜六月期の国内総生産(GDP)が五・四半期ぶりにプラス成長に戻った。ひとまず急落基調が止まったのは喜ばしいが、この先は二番底に陥るリスクもある。引き続き警戒態勢で臨むべきだ。
内閣府が先日発表した速報値は物価要因を除いた実質が年率換算で前期比3・7%増となった。直前の一〜三月期がマイナス11・7%、昨年十〜十二月期は同13・1%だったことからみれば「最悪期はなんとか脱した」といえる。
しかし、中身をみると、とても今後を楽観できない。政府の財政フル出動と中国をはじめとした外需頼みで、ようやくひと息ついたにすぎないからだ。いずれ財政や外需が息切れすれば、景気は再び下向きに転じる可能性が高い。
微増を支えたのは、政府の財政出動部分に相当する公的資本形成と輸出から輸入を引いた純輸出(外需)である。個人消費もわずかに増えたが、これもエコカー減税や家電向けエコポイント導入による刺激効果が大きい。
昨年秋以降、政府は本年度当初予算と三度の補正予算を編成した。財政赤字拡大というコストを伴ったが、とりあえずがけから転落する状況は食い止めた。問題はこれからだ。
いつまでも財政に頼れないのは、巨額赤字をみれば自明である。できるだけ早く内需中心の自律反転軌道に乗せねばならないが、肝心の企業活動はなお低調だ。設備投資は先行き不透明感を反映して、主力の製造業が必要最小限に絞り込んでいる。
個人消費が本格的に回復するには家計の手取り収入が増えねばならないが、所得は減り、失業率も上昇している。住宅投資も落ち込んでいる。当面、個人消費が景気を支えるシナリオには期待できないとみた方がいい。
すると、残るは外需しかない。好むと好まざるとにかかわらず、外需が支えている間に、内需を徐々に掘り起こして家計所得の回復を目指す道がもっとも現実的ではないか。
幸い、電子部品など中国向け輸出は好調だ。米国が本格回復しなければ、巡り巡って中国向け輸出も息切れするとの見方もあるが、中国は巨大な国内市場を抱え、成長余力が残っている。
アジア市場など外に目を向ける中小企業がもっと増えていい。日本の企業自身が効率化を急いで、生産性を向上させる努力が不可欠であるのは当然だ。
この記事を印刷する