駿河湾で起きたマグニチュード(M)6.5の地震で、東名高速道路の一部区間の路盤が崩落した。M8級が想定される東海地震に比べ、けた違いに小さな地震で物流の大動脈が通行不能になった。
国土交通省や自治体、高速道路会社は、この事態を地震防災や復旧計画を覆しかねない重大な「警鐘」と受け止める必要がある。
崩落は規模が大きかった。盛り土をした路肩から崩れ、路盤にまで及んだようだ。高速道路などの盛り土崩壊は能登半島や中越の地震でも発生し、専門家は地震対策の必要性を指摘していた。
東海道新幹線は早くから東海地震に備えた対策が講じられてきた。東名高速も橋梁(きょうりょう)については阪神・淡路大震災以降に補強がなされた。
橋などの建築物と違い、盛り土には耐震基準がない。盛り土は安全に使用していく上で必要な強度を保てるよう計算で確認し、つくられているが、地震動に対して意外にもろい部分が存在することがわかった。
首都圏で大地震が発生した時、東名や中央高速は復旧に必要な人員や物資を運び込む輸送ルートと位置づけられている。首都圏以外でも「高規格幹線道路」と呼ばれる自動車専用道は災害復旧の要だ。寸断されたら復旧がままならない。
幹線道路の盛り土すべてに耐震補強を施すのは非現実的だが、崩落の危険を宿す弱い場所を洗い出すことは可能だろう。国や自治体など道路管理者が、そうした情報を共有することがより実効性のある防災・復旧計画づくりにつながるはずだ。
高度成長期に大量につくられた道路の老朽化が進んでいる。総人口の減少に直面し、道路や橋は新規建設より維持補修の重要性が増す。過疎地などでは、なおさらだ。天変地異に備えるだけでなく、施設の経年劣化への対応にも万全を期さなければならない。
車の通行量がわずかな道路をつくり続けるのはやめ、人口減の時代にも真に不可欠な道路を選別し、かぎられた財源を耐震対策や補修工事に振り向けるようにする。東名道の崩落は公共事業のそうした発想転換を迫っている。