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歳時記をめくると、病気にも季節がある。夏ならコレラ、暑気あたり、赤痢……。「鬼の霍乱(かくらん)」の霍乱は、今なら食中毒や日射病のことらしい。夏風邪もあるが影は薄い。風邪や流感のたぐいは、やはり木枯らしの季節でないと実感がわかないようだ▼そんな日本人の油断を、邪悪なウイルスが虎視眈々(こしたんたん)と突いてきたようにも見える。新型のインフルエンザが、「本格的な流行が始まったと考えていい」(舛添厚労相)勢いで広がりだした。死亡例も報告され、甲子園球児やプロ野球選手、力士にも感染がおよんでいる▼まず列島を巻き込んだのは5月だった。マスクは売り切れ、催事は取りやめになり、修学旅行の中止が生徒を泣かせた。保育所休業でお母さんは途方に暮れた。過剰反応とも言われたが6月になると潮が引くように関心はうせた▼インフルのウイルスに高温多湿は住みにくい。だが、片隅でしっかり生きながらえていたようだ。再び鎌首を持ち上げて患者は増えた。〈騒いでた頃より多い感染者〉と、ひと月前の朝日川柳は世の無警戒を諷(ふう)している▼〈冬来たりなば春遠からじ〉は名高い詩の一節だが、ウイルスには、苦手の夏が来たら「秋遠からじ」だろう。専門家によれば今はまだくすぶっている程度。秋から冬に、燎原(りょうげん)の火となって暴れる恐れがある▼大正中期のスペイン風邪も、秋からの第2波でぐっと凶暴性を増した。せんだっての第1波の際に、「マスクは冬の風物詩ではなくなった」と言われた。正しく恐れて身構えて、長い闘いに向き合うとする。