舛添要一厚生労働相が新型インフルエンザの「本格的な流行がすでに始まっている」と宣言した。
夏の流行は異例であり、新型の感染力の強さを物語る。症状が重くなり、亡くなる人も増えてきた。感染拡大のスピードを抑え、感染者の重症化を防ぐため、予防の心構えと医療の備えを新たにする時だ。
夏休み中でも合宿やキャンプなど学校行事が多くあり集団生活が感染の広がりの一因とみられる。野球チームや相撲部屋での集団感染も同じ理由だ。新学期が始まると、さらに流行が加速する恐れが大きい。
現時点では新型の病原性が高まった証拠はない。これまで通り、かかっても発症しない、あるいは軽症で済むことも多く、過度にこわがる必要はない。
しかし甘くみてはいけない。新型の致死率は、季節性インフルエンザより高いらしい。慢性疾患をもつ人や妊婦、乳幼児は感染すると重症になりやすい。健康な若者でも重い肺炎を起こして亡くなる例が海外にはある。若者も油断は禁物だ。
重症化リスクの高い人は早めに治療を受ける。医師はインフルエンザの流行を念頭に診断にあたってほしい。病院内での感染の広がりには十分な注意が要る。重症患者の救命に不可欠な人工呼吸器の確保も、医療機関にとって大事な課題だ。
大流行が避けられないとすれば、山をできるだけ低く、到来をなるべく遅くするのが望ましい。そのためには一人ひとりが予防に気を配り、感染を疑ったら、診断を受けたうえ自宅療養を心がける。
政府は一刻も早くワクチンの接種態勢を整える必要がある。
厚生労働省が2500万人分用意するとしてきた新型インフルエンザ用ワクチンは、実際には年内に最大1700万人分しか国内で製造できないことがわかった。不足分はどこから輸入して補うのか、接種の優先順位をどうするのか、具体的に何も決まらないまま流行期を迎えた。
ワクチンの国内生産能力はかねて不足が指摘されてきた。より病原性の高いウイルスが出現すれば「足りない」では済まない。生産能力の増強を真剣に、具体的に、考える時期にきている。