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天声人語

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2009年8月20日(木)付

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 さすがはエスプリの国と言うべきか、フランスに『楽天家用小辞典』なる書物があると仏文学の河盛好蔵が書いている。かつて小欄でふれたが、様々な事柄を皮肉たっぷりに定義していて、たとえば「約束」は「選挙のときに使われる小銭」となる▼さらに、「漠然とした約束は拒絶の最も丁寧な形式である」「約束を守らない人間にもあまり厳しくしてはならない。彼らは希望の種をまく人だから」とワサビをきかす。選挙に向けた各党のマニフェストを眺めていて思い出した▼民主党は「高校授業料の無償化」や「子ども手当」「高速道路の無料化」などを打ち上げた。待ち望む人はいるだろうが、実を結ばせる財源は大丈夫か。辞典のように寛容にならず、ここはひとつ厳しい吟味が必要だ▼片や自民党は、「10年で家庭の所得を100万円増やす」を売りの一つにする。おいしそうだが漠然としてはいないか。かつて「この程度の約束を守らないことは大したことではない」と言った某元首相の声が、どこからか聞こえてくる人もいるだろう▼英国が発祥のマニフェストが日本に紹介されたのは、実は古い。119年前の第1回衆院選の際に「選挙檄文(げきぶん)」と翻訳されたそうだ。「檄」には主張を広く知らせ、決起を促す意味がある▼「投票用紙で武装して、蜂起する日が近づいてきた」と豪州在住の作家、森巣博さんが小紙に寄せていた。歴史的とされる選挙。蜂起までに公約の虚と実、真と偽をとくと見定めるとしよう。かつがれました、では子孫(こまご)の将来にも申し訳がない。

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