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8月18日付 編集手帳

 年配の時代劇ファンならば、旗本退屈男の額に残る傷あとを思い出すかも知れない。「パッ、天下御免(ごめん)の向こう傷」。弓形の()えた月が夜空に懸かっている◆江戸期の俳人、田捨女(でんすてじょ)に、三日月を釣り針に見立てた一句がある。〈出て見よと人釣り針か三ヶの月〉。月を見に出ておいで――人を釣っては戸外に誘い出すような月であることよ、と◆解散からやけに長く感じられた前哨戦も終わり、きょうは衆院選の公示である。餌の甘言をちりばめた人釣り針ならぬ“票釣り針”が隠されていないか、投票日までじっくり、候補者の声に耳をすますとしよう◆旗本退屈男のせりふにある「向こう傷」とは体の前面に受けた傷をいう。敵に正面から立ち向かった証しである。景気、年金、財政、安全保障と難題ぞろいのいま、ともかくも逃げない人を、政党を選ぶほかあるまい◆三日月を釣り針ではなく、研ぎ澄ました匕首(あいくち)(たと)えたのは俳人松本たかしである。〈雪嶺(せつれい)に三日月の匕首(ひしゅ)飛べりけり〉。なかには劣勢で、刃の感触をひんやり首筋に感じている候補者もいるだろう。悲劇あり、喜劇ありの「政治の季節」である。

2009年8月18日01時26分  読売新聞)
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