自然エネルギー買い取りなど自民、民主両党の資源政策の隔たりが大きい。温暖化ガス削減には巨額の費用がかかる。国民の負担を和らげ、日本経済を活気づける資源政策の見取り図を描くべきだ。
自民党は余った電力を高値で買い取る太陽光発電を、二〇三〇年に今の四十倍に増やす目標を政権公約に記した。民主党は自然エネルギーすべての全量買い取りを打ち出した。自民はなぜ太陽光に限っているのか。
最近は小水路を活用するミニ水力発電などにも関心が集まっている。二酸化炭素(CO2)を出さない自然エネルギーを総動員せずして低炭素社会を築けるのか。
温暖化ガス削減の中期目標は、さらに開きが大きい。二〇年にCO2の〇五年比15%削減を表明した麻生政権に対し、民主は一九九〇年比25%削減(〇五年比30%削減)を掲げた。「ポスト京都」の温暖化対策の枠組みは、年末のコペンハーゲン会議(COP15)で決められる。自民をしのぐ民主の数値目標は、日本が率先して高めの数値を掲げ、国際交渉をリードしていくとの宣言でもある。
しかし、日本経団連に協力を求めた民主党の岡田克也幹事長に、産業界から反発が相次いだ。
自民の15%削減は海外から購入する排出枠などを除いた「真水」だ。途上国での排出削減対策分なども合算した欧米の目標を実質上回るので、日本は排出規制による経済成長の鈍化がもたらす所得減少などにより、欧米より多い一世帯年七万七千円の負担を強いられる。民主の目標は高すぎて、負担がさらに膨らむとの反発だ。
もちろん交渉は公平でなければならないが、同じ経済団体の経済同友会の主張にも耳を傾けたい。
経済への影響などマイナス面を論じすぎてはいないか。むしろ次世代のエコカーはじめ、化石燃料を封じる技術を深化させ、これを新たな成長の芽に育て上げて負担を軽くすべき−との考え方だ。
経済産業省の試算では、削減約束が15%でも、省エネ家電への切り替えなどで六十兆円の費用を要する。なお比較優位があるとされる日本の環境技術をさらに磨き、新興国市場をも視野に入れたプロジェクトを経済効果に結びつける大胆な政策が不可欠だ。
民主党は急きょ環境産業の育成を政権公約に追加したが、成長を促す迫力が伝わってこない。政党を問わず、地球の温度上昇を産業革命前の二度以内に抑える道筋を国民に語りかけてほしい。
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