HTTP/1.0 200 OK Age: 292 Accept-Ranges: bytes Date: Sat, 15 Aug 2009 02:16:19 GMT Content-Length: 7623 Content-Type: text/html Connection: keep-alive Proxy-Connection: keep-alive Server: Zeus/4.2 Last-Modified: Fri, 14 Aug 2009 14:20:18 GMT NIKKEI NET(日経ネット):社説・春秋−日本経済新聞の社説、1面コラムの春秋

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春秋(8/15)

 もとはもっぱら激しい寒さや恐怖、嫌悪を表現した「鳥肌が立つ」という言葉は、最近は感激した時にも使われる。「総毛立った」と言えば誤解はないだろうか。1934年のナチス党大会を宣伝用に記録した映画「意志の勝利」を見終わっての気持ちである。

▼映画はいま東京で公開されている。総統になったばかりのヒトラーや側近の絶叫がこれでもかと出てくる。陸上競技場の観客席とフィールドを埋めつくす若者に向かって「まず平和を愛せ。そして従順、勇敢であれ」とあおり立てる独裁者。画面からはその真意、グロテスクな素顔が透け出ている、ように思える。

▼が、後知恵だと言われれば反論はできない。ヒトラーは映画の出来に大いに喜び、ドイツ国外でもプロパガンダ映画の傑作と評された。党員の陶酔と高揚が全編にあふれている。当時の観客に、今流の「鳥肌が立つ」感動に浸らなかった人間がどれほどいたのか。その恐ろしさをいまに伝えるのも映像の力である。

▼歴史にタラレバは禁物というが、後知恵はどうか。起こったことをひっくり返すことはできはしない。それでも、もう繰り返さない、今度は後知恵にならぬよう知恵を出す、と心に決めることはできる。広島、長崎の原爆忌。そしてきょうの終戦の日。日本の8月にはそんなことを考える。

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