欧州景気の悪化がようやく一息をついたようだ。単一通貨を採用するユーロ圏16カ国の4〜6月期の域内総生産(GDP)は、物価変動の影響を除く実質の速報値で前期比0.1%減とほぼ横ばいだった。
年率に直したマイナス幅は0.4%と、通貨統合以来で最悪だった1〜3月期の約10%よりも大幅に改善した。英国や中・東欧など、非ユーロ圏を含む欧州連合(EU)27カ国のGDPも0.3%減と下げ幅が縮小した。
マイナスは5四半期連続で、なお低迷しているが、長いトンネルの出口も見えてきた。GDPは前年同期比では5%近いマイナスで水準自体は低いとはいえ、景気に下げ止まりの兆しが表れたのは朗報だ。
欧州経済に自律的な成長力が戻ったわけではない。政府が急きょ導入した景気刺激策や、中国向け輸出などの外需回復に支えられた面が大きい。雇用環境などを考えると上向きの動きが持続するかどうかは不透明だ。欧州景気の持ち直しには時間がかかると見るのが賢明だろう。
各国別ではドイツ、フランスの主力経済国がともに0.3%のプラス成長に戻ったのが目立つ。両政府の景気対策が功を奏している。年式の古い車を環境性能の高い車に買い替える際の「スクラップ補助金」が効き、独の国内新車販売台数は7月まで6カ月連続で前年同月比プラスとなった。フランスも同様だ。
自動車産業のすそ野は広く、景気対策の恩恵が浸透しつつある。だが裏を返せば、対策は需要を先食いしているにすぎない。現在の「特需」を着実な回復につなげることが問題になる。
欧州にとってもう一つの宿題が、個人消費の行方を左右する雇用の安定だ。6月のユーロ圏失業率は9.4%と10%の大台が迫る。失業率が特に高いスペインなどで社会不安も生じている。雇用は景気の変動に遅れてついていく傾向が強い。一段の雇用調整が進むと、消費が低迷して景気回復がさらに遅れかねない。
リトアニアなどバルト諸国やハンガリーなど、金融危機で傷んだ国の経済は大幅なマイナスが続く。各国政府や欧州中央銀行(ECB)の景気への繊細な目配りが問われる。