HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 14 Aug 2009 02:18:50 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:クロマグロ禁輸 末永く味わうために:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

クロマグロ禁輸 末永く味わうために

2009年8月14日

 絶滅の恐れがある生物の取引を規制する来年三月のワシントン条約締約国会議で、欧米はクロマグロの全面禁輸を提案する方針だ。漁獲量の約八割を食べる日本。手をこまねいてはいられない。

 日本人は、マグロが大好きだ。だが、その国民的食材が、どこで、どうやって捕獲され、どのような経路で食卓に上るかを、気に留める人は少ない。

 高根の花だった大トロが、“激安価格”で回転ずしのコンベヤーに乗るようになったのは、一九九〇年代の後半だ。地中海沿岸諸国で、沖合にいけすを作って捕らえた若いマグロを放ち、脂身が多くなるよう餌をやって太らせる「蓄養」が盛んになり、日本へ大量に輸出され始めたからだ。

 「青田買い」のようなこの蓄養が、資源の減少に拍車を掛けた。世界的な魚食ブームが、さらに加速させるとみられている。

 回遊魚のマグロは一国だけでの資源管理が難しく、関係国が海域ごとに五つの「地域漁業管理機関(RFMO)」を組織して取り組んでいる。その一つ、「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」は昨秋、漁獲枠の大幅削減を決めたばかりだが、罰則が弱いため、蓄養のための密漁や漁獲量の過少申告、禁漁期間中の違法操業は後を絶たず、RFMO体制への評価は高くない。

 世界自然保護基金(WWF)は「地中海クロマグロは消滅の危機」と警告し、全面禁輸の背中を押している。三分の二の賛成で可決されれば、輸出入だけでなく、遠洋漁もできなくなる。

 日本政府は一昨年、神戸市でRFMOの合同会議を主催して資源回復の行動指針を採択するなど、通常の規制強化には前向きだ。三菱商事は昨年九月、「資源の持続性が確保されねば、マグロビジネスへの関与を見直す」という内容の声明を発表した。禁輸を回避し、“マグロ文化”を守るには、十一月のICCAT年次会合に向け、このように国を挙げて資源管理の徹底を図る意欲を積極的に表明し、具体的方策を率先して提案するしかない。生態系に配慮した漁業を英国の海洋管理協議会(MSC)が認証する「海のエコラベル」の活用なども有力だ。

 消費者の理解も欠かせない。マグロの密漁、さらにはその消滅に、知らないうちに加担してしまわないよう、産地表示に注意しながら食品の流通実態にも目を向けて、消費行動を見直すべきだ。

 

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