台風9号に伴う豪雨や東海地方を襲った地震は、日本が「災害列島」であることをまざまざと見せつけた。岡山県内でも被害が相次ぎ、貴重な文化財にも影響が出た。総社市の古代山城・鬼ノ城(国指定史跡)だ。
城を巡る土塁の一部が大雨で崩れているのが同市教委の調べで分かった。詳しい崩落規模は不明だが、風雨対策のため土塁を覆っていたシート内側に幅1・5メートルにわたって崩れた土砂がたまっていた。
大規模でないとはいえ、ショックなのは、この個所が約1400年前の築城当時のオリジナルな土塁だったことだ。
鬼ノ城では2004年5月、復元工事で残存土塁を覆った再現土塁が長雨のため長さ約15メートルにわたって崩れ、昨年春、新手法で修復作業を終えていた。今回の雨で被害がなかったのは工事の効果を実証したともいえるが、築城当時の土塁の被害は新たな不安といえる。
石垣の堅固なイメージを持つ鬼ノ城だが、全長約2・8キロの城壁のうち9割を土塁が占める。実は「土の城」だ。地球温暖化の影響もいわれる最近のゲリラ的集中豪雨は、従来の予想を超える。自然災害から遺跡をどう守るかという観点からの対策が、これまでにも増して求められるだろう。
史跡の整備事業は近年、各地で盛んだ。発掘して記録し、埋め戻し保存するというやり方から、積極的に整備して広く一般市民に公開し、活用する方向に関心が高まってきた。鬼ノ城は古代山城整備では、そのパイオニア的存在といえる。
古代東アジアの激動の歴史を体感できる鬼ノ城は、吉備最大の歴史モニュメントであり、未来へ渡すかけがえのない文化遺産だ。調査、整備とともに保存のあり方に知恵を絞りたい。