お盆を迎えた。墓地には、亡くなった家族や先祖の供養をする人の姿が絶えない。広島、長崎の原爆の日、終戦記念日と続く8月は、命の尊さをかみしめる月でもある。
昨日、日航ジャンボ機墜落事故が発生から24年を迎えた。群馬県上野村の御巣鷹の尾根に墜落、お盆の帰省客ら乗客乗員520人が亡くなった。空前の惨事だった。
この事故が「空の安全」を訴える原点とも言われるのは、その衝撃度からだけではない。「最愛の人の死を無にしたくない」という遺族らの強い信念が積み重なっての結果でもある。
遺族らは「8・12連絡会」を結成し、「教訓を生かせ」と日航に機体や遺品の公開を求めた。難色を示していた日航だったが、2006年にようやく都内に安全啓発センターを開設、廃棄する方針だった機体の残骸(ざんがい)などの展示に踏み切った。
08年からは社員研修に遺族の講話を取り入れ、持ち主が分からない遺品の一部も展示した。そして昨日、遺族の心情を記した連絡会の会報「おすたか」の閲覧をスタートさせた。日航の意識は変わりつつある。
時の流れとともに教訓の風化が懸念される。事故を経験していない日航社員も増えている。展示された遺品、遺族の思いが発する重い命のメッセージを、しっかりと受け止めなければならない。