政府は、消費者行政を一元的に担う消費者庁を9月1日に発足させるとともに、初代長官に内田俊一元内閣府事務次官を起用する人事を閣議決定した。消費者行政を監視する有識者による機関「消費者委員会」も同時に設立する。
今年5月に消費者庁設置関連法が全会一致で成立。政府は当初、10月ごろの消費者庁発足を目指して準備を進めていたが、麻生太郎首相の強い意向で前倒しされた。一方、民主党などは官僚OBを初代長官に充てる人事案に反発、政府に見直しと発足延期を申し入れていた。
正式決定を受け、民主党の岡田克也幹事長は「選挙結果によっては、政府の拙速な進め方をもう一度やり直すことは十分ある」と述べた。衆院選で政権を獲得すれば、人事や運営方法を見直す考えを示唆したといえ、9月発足に火種を抱えた形だ。
偽装表示や製品事故、悪徳商法など消費者を取り巻くトラブル解決の「司令塔」として消費者庁へ寄せる期待は大きい。関係する約30の法令を各省庁から移管・共管して問題に対処。規制法制が整っていない「すき間事案」では消費者庁自ら業者を指導したり、商品の回収命令を出すこともできる。
だが、課題も抱える。政府は消費者の直接の相談窓口となる消費生活センターを人口5万人以上の自治体(約560)に最低1カ所設置したい考えだが、まだ約350カ所にとどまっている。センターの新設・拡充や相談員の確保など相談窓口の機能強化が急務といえよう。
全国の消費生活センターや省庁からの情報を収集、分析し、縦割り行政を打破して迅速に対応できるかどうかも問われる。生産者重視から消費者に軸足を置いた行政の転換が実感できるような組織になってほしい。