米国人を許可なく自宅に入れたとして国家防御法違反罪に問われたミャンマーの民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんの裁判で、特別法廷は禁固3年の有罪判決を言い渡した。直後に軍事政権当局が、減刑して1年6月の自宅軟禁処分とすることを明らかにした。
スー・チーさんは自宅に戻されたが、通算13年9カ月余りになる拘束、軟禁はさらに延長され、来年、新憲法下で実施される総選挙から排除されることは確実となった。
スー・チーさんは今年5月3日、自宅へ湖を泳いで侵入してきた米国人男性と面会。当局に不審者の侵入を通報せず、自宅に泊めるなどしたとして起訴された。スー・チーさん側は米国人に「避難場所を提供しただけ」と無罪を主張した。今後、控訴の方針だが、逆転無罪となる可能性は低いとみられる。
軍政側は「法に基づいた適正な手続き」と主張しているが、ミャンマーの司法は軍政と一体化しており、軍政批判を真正面から行って国民の人気も高いスー・チーさんの封じ込めを狙ったのは明らかだ。
スー・チーさんは1990年に最大野党の国民民主連盟(NLD)を率いて総選挙に勝利した。しかし、軍政は政権移譲を行わず、スー・チーさんを何度も軟禁して民主化運動を弾圧してきた。2007年に起きた反軍政デモでは多数の死傷者も出している。
軍政に民主化を促そうと欧米諸国が経済制裁を科しているが、中国などは消極的だ。潘基文国連事務総長は、今年7月に軍政トップとスー・チーさんの解放や民主化を求めて交渉したが、不首尾に終わったのも各国の足並みの乱れが背景にある。国際社会が結束して軍政へ圧力を強める必要がある。