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天声人語

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2009年8月13日(木)付

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 きのうは「ブルースの女王」と呼ばれた淡谷のり子が生まれた日だったと気づき、その叔父の淡谷悠蔵の逸話をふと思い出した。農民運動に携わり、青森県から選出されて社会党の衆院議員をつとめた人である▼昭和30年代の半ばのこと、池田勇人首相が、かの所得倍増計画を打ち上げた。国会で説く池田に、淡谷は「所得倍増の中には農民も入っているのか」と迫った。短い質問は池田を絶句させ、淡谷は大いに名を上げたそうだ▼「淡谷の農民算数が池田の高等数学に勝った」などと新聞が書き立てたと、作家の吉武輝子さんが『ブルースの女王・淡谷のり子』に書いている。日本の農業はその後、高度経済成長と行き交うように衰退していく。そして今や、食料の自給率は4割前後を低迷する▼その農業をめぐる政策が、きたる総選挙の大きな争点になっている。民主党は農家への戸別所得補償を打ち出した。自民党も所得の増加を第一にうたい、盛りだくさんの支援策を掲げている。淡谷が聞いたら喜ぶだろうか、それともバラマキだと叱(しか)るだろうか▼農業、とりわけ米はもともと政治的利害に左右されやすい「政治作物」だったという。だが最近は、その場の政局に振り回される「政局作物」になったと、東大名誉教授の佐伯尚美さんが小紙で語っていた。定見と展望を欠く政治への叱咤(しった)だとお見受けした▼青い稲が美しくそよぐ季節である。各党の公約はよもや、青田を「票田」としか見ない甘言ではあるまい。じっくりと吟味して「日本の食」の将来を託すことにする。

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