大統領選が二十日に迫ったアフガニスタンで、テロが激化している。治安を担う外国部隊の犠牲も増えている。国民の信を得た政権ができてこそ、外国頼みを脱した自立した国への足掛かりになる。
大統領選は五年前に続き二度目で、再選を狙うカルザイ大統領やアブドラ元外相ら四十人近くが出馬している。
カルザイ大統領優位のようだが、政権の汚職体質などには国民も失望している。当選に必要な過半数を集められなかった場合は、上位二人で九月に決選投票となる。
大統領選にとって、最大の敵はイスラム原理主義の旧政権タリバン勢力である。「選挙に行かず聖戦に参加せよ」と国民を脅し「投票日前日にすべての道路を封鎖する」と予告している。
駐留米軍とアフガン軍は、タリバンの本拠地である同国南部で大規模掃討作戦を始めたが、選挙関係者などを狙ったテロ攻撃は増えるばかりだ。この地域では予定されていた投票所の約一割に当たる六百カ所が、既に開所できない状態だという。
タリバン政権が米軍などの攻撃で崩壊してまもなく八年になる。復興は遅々としてはかどらず、タリバンを復活させつつある。国民から公正に選ばれた指導者が、国民からの求心力を力に、テロに立ち向かっていくしかない。
いつまでも外国頼みではいられない。米軍の無人機による誤爆で一般市民が犠牲になるなど、国民の外国に対する感情は複雑だ。「外国人を追い出せ」というタリバンの主張が一般国民に受け入れられるのも現実である。
北大西洋条約機構(NATO)主導の国際治安支援部隊(ISAF)の兵士六万四千人が治安維持を担っているが、七月の兵士の死者は七十五人と月別で過去最悪となった。米国だけでなく、NATO加盟国も五千人の増派に同意したが、犠牲者の増加に各国の世論も増派には抵抗が強まっている。
日本も海上自衛隊によるインド洋での米艦船などへの給油活動を行っているが、今度の衆院選で民主党が政権を取れば来年一月で打ち切られ、民生支援に切り替えられる見通しだ。
外国の手助けが必要なくなる国になる第一歩が、今回の大統領選だろう。日本など多くの国が選挙監視団を派遣する予定だ。
できる限り多くのアフガンの人々が公正に一票を投じることができるよう、国際社会も支えたい。
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