お盆休みを古里で過ごす人たちの帰省が続いている。台風の影響が気掛かりだが、久しぶりに家族らと顔を合わせれば会話も弾み、心癒やされることだろう。
岡山県展審査会員などを務め、昨年4月、80歳で亡くなった彫刻家大桐國光さんの作品も古里の新見市に帰ってきた。新見美術館で開催中の没後初の遺作展である。力強い塊で人間の生命力を表現した40点余の具象彫刻。大桐さんの作品への思いがじわり伝わってくる。
兵庫県姫路市の生まれだが、幼時に母と死別。父親の郷里、新見市哲多町で育った。大自然の中で牛と戯れながら、孤独に耐える力も養った。
岡山大特設美術科の第1期生。4年の時、日展の洋画と彫刻の2部門に入選したが、彫刻の道を選んだ。彫刻は無口で孤独な作業。自分の性格に合っていると思ったそうだ。彫刻の仕事は手間暇かかる。一番の難しさは「最初の感動を完成まで持続させること」と伺ったこともある。
人間の内面がにじみ出た首像。裸婦像に見るみずみずしさ、ダイナミックな肉体賛歌。会場を一巡しながら、造形に込められた詩情と温かいヒューマニズムをあらためて思った。
展示作品のうち30点は、遺族から新見市に寄贈された。古里に作品が永久保存され、泉下の大桐さんもさぞ喜んでいるに違いない。