1962年から5次にわたり策定された全国総合開発計画(全総)に代わる「国土形成計画」が完成した。国による画一的な開発中心の全総への反省から生まれた新たな指針である。
国土形成計画は二本立てになっている。全体の方向性を示す全国計画に加え、地方独自の取り組みを尊重した広域地方計画を定めた。国主導から地域の主体性を重視した国づくりへと、方向転換する契機にしたい。
昨年7月に策定された全国計画には、東アジアを中心とする国々との連携による成長力維持や、災害に強い国土整備などが盛り込まれた。
今回、約1年遅れでまとまった地方計画には、中国、四国、首都圏など8地方ブロックごとに今後おおむね10年の地域づくりの基本方針が掲げられた。各地の自治体は実施態勢づくりなどの具体的対応を加速させる。
地方計画は各ブロック内の自治体や経済団体、国の出先機関などでつくる協議会が原案を作成。住民や有識者らの意見を募って修正を加えた。
例えば中国圏の計画では、岡山、広島両県で自動車の次世代技術の研究を集約する。日本海と瀬戸内海を結ぶ広域幹線道路網の整備促進なども図る。
地方分権の一環で道州制導入が検討される中、地方計画を踏まえた各種事業の具体化は、県境を越えた連携や調整などが実際にどこまで機能するかを占う試金石となろう。地方の力量が問われる。
重要なポイントは、役割分担と相互補完による共生の理念を貫けるかどうかだろう。各自治体が地元への利益誘導にとらわれれば、計画通りの成果は得られまい。一方で国は地方への権限や財源の委譲を徹底し、地方が独自性を発揮しやすい環境を整える必要がある。