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この世界のことを「天地」と書いて「あめつち」と読む。そこからの連想だろうか、古くには「天地の袋」という縁起物があって、女子が新春を祝って作ったそうだ。幸福を中に入れて逃がさぬようにと、上も下も縫い合わせたという▼天地のはざまに人は住み、世界には多彩な幸がある。一方で、あれやこれやの災いも多い。「天変地異」はその最たるものだ。台風という天変を心配して床に就いたら、朝早くに地異で跳び起きた。「すわ東海地震か」と肝をつぶした人も多かったのではないか▼駿河湾を震源とする地震は、静岡県を中心に広い地域を襲った。台風が来ているからと遠慮することなく、雨にゆるむ国土を最大震度6弱で揺さぶった。東名高速道の路肩がざっくりとえぐられた▼きのうの小欄は天変について書いた。空の変調もときに急激で、たとえば「三杯雷」という言葉がある。雷鳴を聞くと飯を三杯食べる間に土砂降りになる。そんな戒めだという。だが地震にはその間もない。常に背後からの辻斬(つじぎ)りさながらだ▼おとといの小欄に引いた寺田寅彦は、防災の大切さを説く警世家でもあった。日本の自然には「慈母の愛」と「厳父の厳しさ」があると述べ、愛に甘えて厳を忘れると痛い目に遭うと警告を残している▼天変も地異も、はるか太古からの地球の営みだ。きのうの揺れは東海地震の前兆ではないようだが油断はならない。天地のはざまに間借りするわれわれ次第で、被害は増えも減りもする。怠ってはいないかという、厳父からの忠告かもしれない。