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震度6弱―「東海」の備えは大丈夫か

 早朝の強い揺れに跳び起きた人も多かったに違いない。

 昨日の地震は、静岡県で震度6弱を記録したのをはじめ、揺れは関東から中国地方までの広範囲に及んだ。

 マグニチュード(M)6.5という地震の規模以上に人々を緊張させたのは、東海地震の震源域として想定されている駿河湾で起きたためだ。

 M8が予想される巨大地震、東海地震の前兆かどうかを判断するため、1979年にできた気象庁の地震防災対策強化地域判定会の臨時の打ち合わせが初めて開かれた。専門家たちは、この地震がただちに東海地震に結びつくものではないとの結論を出した。

 とはいえ安心はできない。地震の性質を詳しく分析し、東海地震との関係について慎重に見極める必要がある。

 東海地震の切迫度を示す3段階のうち、最も低い「東海地震観測情報」が初めて出された。政府の地震調査研究推進本部によれば、東海地震が今後30年に起こる確率は87%と高い。

 今回の地震を警鐘としてとらえ、備えを点検しなければならない。

 東海地震は、日本列島が乗ったプレートと、その下に潜り込んでいる海側のプレートとの境界で起きるとされる。海溝型巨大地震の代表格だ。

 いつ起きても不思議はないとの説が提唱されたのが1976年、それを機に、プレートの動きなどの前兆現象をとらえて予知をめざそうと、大規模な観測態勢が敷かれた。

 それから30年以上、東海地震は起きていない。一方で、阪神大震災などの直下型地震の不意打ちが続いた。わかったのは、予知がきわめて難しいことと、事前の備えの重要性だ。

 中央防災会議は05年、死者9200人と予測される東海地震の被害を、建物の耐震補強や津波対策などによって10年で半減させる目標をつくった。昨年までの達成度はまだ2〜3割程度。着実に進めねばならない。

 防災先進県を襲った地震だったが、東名高速の路肩が崩れ、帰省ラッシュに大きな影響を与えた。東海地震の震源域には日本の大動脈が何本も走り、原子力発電所もある。大きな被害が出れば、打撃は計り知れない。

 東海地震がこれまで起きていないことは、東南海・南海という、東海沖から四国沖を震源域とする巨大地震が、東海と連続して起きる可能性に現実味を加えている。この最悪のシナリオへの備えも十分に点検する必要がある。

 西日本に大被害をもたらした台風9号が東海沖を進むさなかに地震が起きた。温暖化で豪雨も増えるなか、地震が風水害と重なって被害を広げる恐れも決して無視できない。

 私たちが「災害列島」に生きていることを改めて自覚し、命と生活を守るための知恵を集めよう。

ミャンマー―軍政がアジアを脅かす

 ミャンマー(ビルマ)の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チー氏に対して、軍事政権はさらに1年半の自宅軟禁を命じた。

 当局の監視をかいくぐり、湖を泳いで渡ってきた米国人を自宅に泊めたことが、外部との接触を禁じた国家防御法違反に問われた。法廷は労働を伴う3年の実刑判決を出したが、軍事政権が直後に自宅軟禁に変更した。

 国際社会の批判を意識して「減刑」したとアピールしたいのだろうが、そもそも根拠の乏しい訴追なのだから、不当さに変わりがあろうはずがない。

 スー・チー氏の自宅軟禁や拘束は計14年間に及んでいる。軍事政権は「民政移管」のために、来年前半に総選挙を行うとしているが、結局、国民に支持されるスー・チー氏を選挙活動に加われないようにするのが今回の自宅軟禁の狙いだろう。

 こんな形で総選挙を強行しても、その正当性が認められることはありえない。日本をはじめ国際社会の多くの国々は、スー・チー氏を含む全政治犯の釈放を求めている。軍事政権はこの要請にすぐに応じるべきなのだ。

 88年のクーデター、そしてスー・チー氏率いる国民民主連盟が大勝した90年の総選挙結果を握りつぶして以来、軍事政権の強権統治はひどくなるばかりだ。2年前、生活難に抗議する僧侶や市民らのデモを武力鎮圧し、日本人ジャーナリストの長井健司さんが射殺された。

 軍事政権の独善的な行動は、アジア全体に深刻な影を落としつつある。とくに心配なのは、北朝鮮との軍事協力が進んでいる疑いが出てきたことだ。

 6月、国連制裁で禁止されている武器などを積んでいる恐れがあるとして、米軍が追跡した北朝鮮船舶は、ミャンマーに向かっていたとされる。首都ネピドー付近で核関連施設と疑われる地下トンネル網が北朝鮮の協力で建設されている、という報道もある。

 クリントン米国務長官は先月、訪問先のタイで北朝鮮からミャンマーへの核技術移転の可能性に懸念を示した。

 もしミャンマーが核開発に手を染めているとすれば、アジアの安全保障の構図はがらりと変わる。

 日本政府は、軍事政権をあまり追い詰めると、もともとミャンマーと関係の深い中国の影響力がますます強まってしまうとして、激しい政権批判を控え、対話を維持してきた。しかし、ミャンマーに核関連疑惑があるとなれば、悠長なことは言っていられない。中国に対して影響力を行使するよう働きかける必要があるし、中国自体も事態を深刻に受け止めるべきだ。

 北朝鮮に対する国連制裁を実効あるものとするためにも、政府はミャンマー問題で国際的な連携を強めなければならない。

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