再選されたイランのアハマディネジャド大統領が就任宣誓をした。選挙結果をめぐる対立がくすぶり続け、イスラム体制そのものが揺らいでいる。不安定さが周辺国に及ぼす影響が懸念される。
大統領は国会での宣誓で国民に結束を訴え、選挙結果の公正さに疑問を呈した欧米諸国を「内政干渉だ」と批判した。だが宣誓式に複数の実力者が欠席するなど、多難な二期目の船出となった。
選挙に出馬した改革派ムサビ元首相の支持者らが「開票に不正があった」と抗議デモを続け、最近は沈静化したものの、少なくとも二十人が死亡したとされる。
混乱をどう収拾するか、指導部内の対立も噴き出した。中でも政策や閣僚人事をめぐって、最高指導者ハメネイ師と、行政府の長で体制ナンバー2のアハマディネジャド氏との確執が表面化し、宗教界や軍部、情報機関まで巻き込んだ対立に発展している。
現在の混乱は民主化への過渡期の現象だという分析もある。一方で大統領が国内の混乱を収めるために、欧米との対決姿勢をさらに強める可能性も排除できない。
「核開発は平和目的だ」とイラン政府は一貫して主張する。増大する電気需要を賄うために商業用原発が必要だというが、自国でウラン濃縮をし、プルトニウムが抽出できる重水炉の建設を進め、国際社会が懸念を強めている。
新政権は核開発の疑惑を晴らさなければならない。国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れ、核関連の機材や物質が軍事転用されないことを証明すべきだ。
国交が断絶したままの米国との対話再開も望みたい。オバマ政権は前政権のようにイラン封じ込め政策はとらないと表明し、対話に応じるか、九月を期限に回答を待っている。
石油の埋蔵量が世界第二位のイランには各国の思惑が交錯する。欧米や日本は核開発を強く批判するが、経済関係重視の中国とロシアの批判はやや弱い。
イランは人口約七千万人、イスラム教シーア派の本拠地であり、不安定さは中東全体にも悪影響を及ぼす。核を保有しているとされるイスラエルとの緊張が高まる恐れもある。
アハマディネジャド大統領が対外強硬路線に走らぬよう、関係国には目先の利害を越えた協調を求めたい。
この記事を印刷する