経済政策について自民、民主の二大政党がマニフェスト(政権公約)で掲げた主張は、ともに物足りなさが残る。なお危機的状況にある日本経済をどう立て直していくのか、明快な論戦を望む。
登山に例えれば、ゴールは示したが頂上までの道が見えない自民党に対して、道はたくさん示したものの到達点が見えない民主党。両党の公約をみると、そんな印象を抱く。目標と手段のどちらかが、ともに欠けているのである。
まず自民党。「二〇一〇年度後半には年率2%の経済成長を実現」「三年間で四十兆〜六十兆円の需要を創出し、おおむね二百万人の雇用確保」「十年で家庭の手取り収入を百万円増加」という目標を掲げた。
日本経済はおおむね1・5%の潜在成長率があるといわれているので、資源を有効に活用して失業を減らしていけば、2%成長という数字自体は夢物語ではない。問題はどう達成するのか、だ。
ところが政策手段となると、いまひとつ迫力がない。環境に優しい次世代自動車やグリーン家電の普及、iPS細胞や太陽電池など技術開発、情報技術(IT)のフル活用など、霞が関の役所が用意したような既存のメニューを並べるにとどまっている。
中小企業対策として、官公需契約の増額目標や「不当廉売に断固対処」するためのガイドライン見直しを掲げたあたりには、官主導経済への逆戻りをうかがわせるような発想がにじむ。
税金による自動車や電機産業など特定産業への支援は即効性がある半面、補助金がなくなれば息切れする可能性が高い。政府支援が長引けば、企業の向上意欲を鈍らせて競争力をそぐ懸念もある。 一方の民主党。こちらは一一年度から農業の戸別所得補償一兆円や雇用対策〇・八兆円といった歳出項目を並べたが、成長率の数値目標は示さなかった。中小企業の法人税率(現行は時限措置で18%)を11%に引き下げるとしているが、成長戦略が乏しい。
高速道路の無料化やガソリン税暫定税率の廃止が経済活性化に資する面はあるだろう。だが、雇用一つとっても、最大の対策は経済全体の底上げである。
中国やインドなど新興国が追い上げる中、肝心なのは企業自身が生産性を高めて、製品の付加価値を高めていくための環境づくりだ。各党は政権公約の追加修正も視野に入れ、景気回復への基本的考え方を論戦で示してほしい。
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