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09総選挙・子育て支援―未来への投資を競え

 子育て対策が、やっと政治の最重要課題に躍り出た。

 衆院選マニフェストで、民主党が中学卒業まで1人月額2万6千円を出す「子ども手当」や公立高校無償化をうたい、自民党は子育てに配慮した低所得者向けの給付や税額控除、幼児教育の無償化を打ち出した。

 少子化に歯止めをかける環境を整えることは、明日の日本にとって待ったなしだ。未来を担う世代への投資に本腰を入れる姿勢を各政党が明確にしたことを評価したい。

 日本の社会保障給付は、高齢者対策に偏ってきた。いまも7割はお年寄りの年金や医療・介護に使われ、子どもに対してはわずか4%だ。

 民主党案の子ども手当に必要な費用は年5.3兆円。現在子ども対策に充てられている予算は、政府と自治体を合わせて約3兆5千億円だから、一挙にそれ以上の大金を投じようという大胆な提案である。

 自民党案についても、早急に具体的な内容を知りたいところだ。

 厚生労働省の調査によれば、未婚男女の9割が結婚したいと考え、夫婦は平均2人の子を持ちたいと願っている。だが、その希望をかなえられないのが出生率1.37の日本だ。

 支援策の充実で日本の出生率を回復に向かわせることが期待される。

 それには、現金給付に加え、子育てしやすい社会的環境を整えることも重要だ。とくに保育施設の充実を急がなければならない。

 認可施設に申し込んだが入れない待機児童は約4万人。自民、民主とも公約で「待機児童解消」を掲げているが、具体的にどう取り組むのか。

 厚労省の試算によると、働きたい女性の希望に応えるには、乳幼児保育100万人分、小学1〜3年の放課後保育145万人分の対策が新たに必要で、保育園の運営費や育児休業する人への補償などを含め年1.5兆〜2.4兆円の財源が要るという。

 フランスでは、90年代半ばに1.66だった出生率が06年には2を超えた。その背景には、現金給付に加えて保育サービスの拡充があった。

 いずれにせよ、子育て支援には大幅な財政支出の増加が伴う。財源難の中でも、最優先に取り組まなければいけない課題である。自民にせよ民主にせよ、やがて本格化する財源論議への備えが問われる。

 少子化対策には政府や自治体の措置だけでなく、民間企業で働きながら子育てをしやすい職場環境をつくっていくことも大切だ。

 そうした方向へ社会を導くために、政治が何をしなければならないか。広い視野から「子育て支援」にどう取り組むのか、選挙戦を通じてとくと聞いてみたい。

経済指標改善―景気はなお正念場にある

 底なし沼のように見えた世界同時不況は、最悪期を脱しつつあるようだ。国内の経済指標も景気の改善を示すものが目立ち、政府が近く発表する今年4〜6月期の国内総生産(GDP)は年率で前期比4%程度のプラスに転じる、との民間予測が出ている。

 6月の鉱工業生産指数は4カ月連続で上昇した。東証1部上場企業の4〜6月期決算は、全体としてみれば黒字に転換している。

 内容の善し悪しを別にしても、政府の財政支出が当面の下支え効果を発揮したことは間違いない。

 だが、現状は景気回復というにはほど遠い。がけから落ちるような悪化に歯止めがかかったとはいえ、総需要は大幅に収縮したままだ。現在の鉱工業生産の水準は昨秋の8割ほどでしかない。企業の設備は余っており、内需の先行きを左右する設備投資計画は歴史的な落ち込みを示している。

 雇用情勢はますます厳しくなっている。6月の失業率は5.4%に悪化し、過去最悪の5.5%を超すのは時間の問題だ。先月発表された経済財政白書は企業が抱える余剰人員を607万人と推計した。このままでは失業率の6%突破も懸念される。

 雇用の減少と賃下げで消費者の購買意欲は低下している。6月の消費者物価指数が1.7%下落したのもその表れだ。需要の減少による物価下落が企業業績と設備投資を損ない、経済全体の収縮が続くデフレの悪循環に陥る危険がある。そうならないよう、厳重な警戒が必要だ。

 同様の懸念は世界経済にもあてはまる。米国の4〜6月期の成長率はマイナス1%で予想より良かった。失業率もやや改善したが、10%を超す不安はぬぐえない。欧州も失業と物価下落に苦しんでいる。

 巨額の財政出動をてこに明るさを放つ中国も、成長率こそ4〜6月期で前年同期比7.9%に戻したが、都市部の失業率は上昇している。

 金融危機に伴うショックは和らいだものの、大量失業とデフレの脅威をどう回避するか。日本を含む世界各国は引き続き正念場に立っている。

 景気が「二番底」に落ち込むようなら、追加策が求められる。だが、財政赤字の制約もあり、納税者の支持を得られる「賢い支出」、とくに雇用維持や新たな内需拡大と経済成長につながる政策が求められる。

 政府の役割は重要だが、民間の奮闘にこそ期待したい。新たな成長に向けた自己変革の知恵と努力だ。

 電機産業がアジアの中間層を狙った割安な商品開発に挑んだり、飲料メーカーが海外戦略を積極的に進めたりしているように、世界の成長市場に溶け込もうとすれば、多くの可能性が見えてくるはずだ。

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