覚せい剤を所持していた疑いで女優の酒井法子容疑者(38)に逮捕状が出た。これまでスキャンダルと無縁だった“優等生”に何があったのか。薬物汚染の底知れない広がりすら思わせる。
芸能界では過去、何度も薬物事件が起きている。ここ数年でも、人気音楽グループ「ドリームズ・カム・トゥルー」の元メンバー西川隆宏、俳優の加勢大周、元アイドルの小向美奈子の各氏といった人気者たちが覚せい剤使用などで逮捕。今月三日には、合成麻薬を使用したとして俳優の押尾学容疑者が逮捕された。
そんな中でも、今回の事件の衝撃は大きい。好感度が高い酒井容疑者は、最高裁が企画・制作した裁判員制度の広報映画で、ごく普通の主婦役で主演するほどだったからだ。
酒井容疑者は一九八六年に十四歳でデビューした。子どものころに両親が離婚し、父親はその後、交通事故で死亡。苦労に負けず、明るくけなげに頑張るアイドルのイメージがあった。「のりピー」という愛称で親しまれ、中国や台湾でも人気者になった。結婚後は大人の女優への脱皮に成功。優しく、しっかり者の母親を演じ、CMにも引っ張りだこだった。
あまりに印象と違う今回の容疑。もし事実とすれば、芸能界の薬物汚染は相当深刻といえよう。
薬物の問題は芸能界にとどまらない。昨年は、さまざまな大学で大麻使用が明るみに出た。
全国の警察が摘発した大麻事件の人数は二千七百七十八人。統計を取り始めた五六年以降、最多になった。年齢別では三十歳未満の若年層が62%を占めている。また覚せい剤事件も、人数こそ前年より減少したものの押収量は増加。いずれも氷山の一角とみた方がいい。
有名人の薬物使用が相次ぐことで、安易に薬物に手を出す若者が増えている恐れはぬぐい切れない。芸能界は本気で薬物乱用防止に取り組む必要があろう。
薬物汚染が広がっているとすると、地域や学校、家庭での対応も求められよう。いま一度薬物依存について考えてみたい。
事務所関係者によると、人一倍周囲に気を使うタイプだったという酒井容疑者。ヒット曲「碧(あお)いうさぎ」(牧穂エミさん作詞)には「ずっと待ってる 独りきりで震えながら」という一節がある。一刻も早く真相を明らかにしてほしい。心を痛めているファンのためにも。
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