子どもたちの人権を踏みにじる卑劣な児童ポルノ事件が急増している。警察庁がまとめた今年上半期(1〜6月)の摘発事件数、被害児童数は、いずれも統計を取り始めた2000年以降で最多となった。
摘発事件数は382件で前年同期より27・3%も増えた。摘発された人数は289人、身元が特定できた被害児童数は218人で、ともに前年同期に比べて1・5倍という激増ぶりだった。被害児童は中学生が106人で最も多く、高校生71人、小学生33人などとなっており、小学生が前年同期より73・7%も増えるなど低年齢化が進んだ。摘発されたのはまだ“氷山の一角”といわれる。
現行の児童買春・ポルノ禁止法は「18歳未満の児童を撮影した、性欲を刺激する写真や映像」を児童ポルノと定義し、販売・提供目的に限って所持を禁止している。個人が趣味で持つ「単純所持」は容認されている。
しかし、主要8カ国(G8)の中で単純所持を認めているのは日本とロシアだけだ。日本はインターネットなどを通じた児童ポルノの「供給国」との国際的な非難を浴びてきた。
そこで、昨年の通常国会以来、新たな規制強化を盛り込んだ改正案が自民、公明両党と民主党からそれぞれ提出されるなど改正論議が続いてきたが、先の通常国会で衆院が解散され白紙に戻ってしまった。与野党の最終調整が進んでいただけに、残念としか言いようがない。
ネットの普及で画像は容易に国境を越え、世界中に広がっていく。また、一度出回ると回収することは困難で、被害者の苦しみや恐怖は続く。児童ポルノ根絶には世界的な取り組みが求められている。日本も早く仕切り直して、規制強化に向けた対策を急がなければならない。