大統領選の結果をめぐる政治対立が続く中で、イランのアハマディネジャド大統領が2期目に入った。最高指導者ハメネイ師が改革派の抗議を退けた結果だが、人事に関する大統領とハメネイ師の対立など保守派の中の利害不一致も表面化した。
革命から30年を経て、イスラム革命体制への求心力低下が目立つ。国内引き締めのため、イラン指導部は対外強硬姿勢を続ける可能性が大きい。イランとの直接対話を模索する米国のオバマ政権の外交のハードルは高くなり、核開発問題の打開に向けた主要国とイランの協議再開へ向けた動きも当面は止まる。
大統領の2期目の就任式に、大統領選でムサビ元首相を支持したラフサンジャニ元大統領らは欠席した。治安当局の武力行使で改革派のデモは選挙直後より小規模になったが、政治対立は長期化するだろう。
保守派の内実も複雑だ。最高指導者は自らの権力基盤を強めるため大統領に肩入れした。大統領はラフサンジャニ師など革命世代の有力聖職者への攻撃を強め、革命防衛隊人脈を中心とした第2世代の非聖職者が主導権を握ることを目指す。
その両者の思惑が一致したのが、「大差で大統領再選」という公表結果だったのだろう。だが、身内を筆頭副大統領に据える大統領の人事に最高指導者が反対して撤回させるなど、同床異夢も早々に露呈した。
アハマディネジャド大統領は2期目の就任式で「抑圧的な大国に立ち向かう」と語り、米欧への強硬姿勢を継続する構えを示した。求心力の支えとして、これまで以上にナショナリズムに頼ろうとしている。
同大統領は直接的な対米批判は控え、「イランは対話を信じる国だ」と微妙なシグナルも送ったが、米国では議会で新たなイラン制裁法案が浮上するなど厳しい対応を求める動きが出てきた。オバマ政権も対話呼びかけへのイラン側の具体的な早期の回答を求め始めている。
革命防衛隊が治安や経済も含めて影響力を拡大するなど、イラン政権の強権色の強まりへの国際的な懸念は大きい。対話の機運を保つためにも、イラン側はまず、大統領選後に拘束した多数の改革派幹部やジャーナリストの解放を急ぐべきだ。