HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 57734 Content-Type: text/html ETag: "15e818-15fb-a95e33c0" Expires: Fri, 07 Aug 2009 21:21:10 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 07 Aug 2009 21:21:10 GMT Connection: close エチゼンクラゲ 大発生は「海の異変」か : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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エチゼンクラゲ 大発生は「海の異変」か(8月8日付・読売社説)

 エチゼンクラゲが、もうすぐ、日本沿岸に大挙して襲来する見通しという。沿岸漁業に深刻な被害を与えかねない、と懸念が広がっている。

 影響を最小限にとどめたい。政府や沿岸自治体は監視体制を強化し、漁業者に、的確な情報を提供していく必要がある。

 このクラゲは黄海など中国沿岸で誕生し、海流に乗り夏から冬にかけて日本にたどり着く。先月から、長崎県対馬沖に先頭集団が押し寄せ始めた。

 とにかく大きい。直径1メートル、100キロ・グラム超は当たり前で、時に同2メートル、200キロ・グラムになる。世界最大級と言われている。

 定置網などの漁網に入ると10匹程度で破れる。魚はクラゲの重みで傷む。網からクラゲを取り除くにも、手間がかかる。

 まずはクラゲの分布・移動状況をきめ細かく把握し、遭遇を避ける。それが被害軽減の一歩だ。

 そのためには、情報提供に工夫が要る。今は、漁業者などの目撃情報を集約して提供する仕組みしかない。これでは遅い。

 例えば、クラゲは海水温が高い場所に多いので、人工衛星で撮影した海水温分布図を提供すれば適切な漁場を選ぶのに役立つ。

 駆除方法も向上させたい。クラゲは軟らかいので、強い網で捕らえて引けば切断できる。だが、大発生すると追いつかない。

 捕らえたクラゲの活用策も検討されている。薬剤開発、土壌改良材などが有力候補だ。ただ、クラゲの漂着量が安定しないため、事業化に高いハードルがある。

 なにより、大発生の原因究明が大切だ。対策にもつながる。

 記録の残る19世紀後半から最近まで、大発生は約40年に1度の出来事だった。今世紀は2002年から、08年を除き、毎年だ。

 特に05年はひどかった。1日に数億匹が日本海に押し寄せたと推計されている。漁網損傷などの被害は全国で10万件を超えた。

 関連を疑われているのが、中国沿岸の海洋環境の変化だ。

 経済発展で大量の下水が流れ込み始め、海が富栄養化した。海水温も4度程度上がり、クラゲの餌になるプランクトンが増えた、と言われる。とすると、原因究明に中国政府の協力は不可欠だ。

 ただ、問題はこれにとどまらない。世界各地で近年、様々なクラゲの異常発生が増えている。「海の異変」との指摘もある。

 クラゲの生態研究は世界でも手薄だ。エチゼンクラゲの実態解明は、国際貢献にもなる。

2009年8月8日01時23分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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