間近に迫る衆院選では、地方分権の在り方も争点の一つになる。分権の是非について、かつて農水省の官僚と議論したことを思い出す。
場所はぎらつく太陽が沈みかけたビアガーデン。相手はジョッキを片手に「暑い夏の日に、農家は冷たいビールを望んでいる。なのにこちらは、同じアルコールでも熱燗(あつかん)を出している。そんなケースがよくある」と苦笑した。
補助金の支給実態を酒に例え、全国一律的な手法が大きな弊害になっていることを認識していた。よく冷えたビールが欲しいのに、熱燗が出てきたらどうなるか。無駄になってしまうのが落ちだろう。これが現実だ。
本来なら農家の状況に応じた補助金を用意し、支援すべきである。だが、今の中央集権体制では小回りがきかない。限界は明らかで、現場に近い都道府県や市町村に権限と財源を移す分権が必要になる。
衆院選を控え、改革派の知事らが活発に各党に分権を働きかけている。たとえ前向きな回答を得ても、権限などを手放したくない霞が関の役人の抵抗は必至だ。
事態を打開するのは、政治の強い指導力しかない。それを選ぶ有権者の目が問われる。ビールに日本酒、ワイン、焼酎など酒の種類もさまざまある。それぞれの地域や個人の要望に応じ、的確に提供される時代が待ち遠しい。