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どんなに天候不順の夏でも、立秋あたりから必ず熱くなる地がある。きょう高校野球が始まる甲子園だ。地方大会に参加した約4千校のほとんどが姿を消し、わずかに49校が夢の途上にある▼夢を追う少年がいて、少年に夢を託す大人がいる。球児の3年間を預かる監督たちである。毎夏、名将の采配や談話を楽しみにしているファンも多いだろう。今大会の名物監督といえば、常総学院(茨城)を率いる木内幸男さんの笑顔がまず浮かぶ▼大舞台で選手の力を縦横に引き出す「木内マジック」。使い手も78歳になった。「甲子園で校歌を1回聴かせてやると、2回、3回と聴くチャンスが出てくるものです」とテレビで語っていた。手品師、なお現役である▼木内さんの常総は03年、ダルビッシュ有投手(現日本ハム)を擁する東北(宮城)を倒して優勝した。東北の監督だった若生(わこう)正広さんはこの夏、強打の九州国際大付(福岡)を連れてきた。甲子園の神様は何を考えたか、開幕戦で両監督が再び相まみえる▼「ひとつは夢を持てること、もうひとつはきちんと挫折を経験できること」。高校野球の素晴らしさをこう説いたのは野球解説者の江川卓さんだ。怪物と騒がれながら、自らの押し出し四球で最後の夏が終わった。敗れたことで、大学野球で頂点に立つ意欲がわいてきたという▼最強の1校を除き、白球の夢はもれなく負けで終わる。それはしかし、新たな夢の始まりでもある。巡り合わせの妙、勝ち抜き戦ゆえの非情が球趣を盛り上げ、甲子園の温度計は裏切らない。