長かった梅雨と豪雨、冷害まで心配される今年の気象だが、竜巻も各地で発生し、この後も続発の恐れは強い。現状は予報の精度はいまひとつだが、危険を避けるのにどうすればよいか。
先月二十七日、群馬県館林市を襲った竜巻で二十人以上が負傷、住宅など四百棟以上が損壊した。十九日には岡山県美作市でも、竜巻によるけが人や百棟近い建物の被害があった。
京都府宇治市などに今月一日に吹いた竜巻の可能性がある強い突風では、国の重要文化財、黄檗宗(おうばくしゅう)大本山・万福寺本堂の屋根瓦や障子が飛ばされた。
竜巻が最も多いのは米国だが、日本も今年は東北や九州でも竜巻らしい突風が起きた。近年、宮崎県延岡市(二〇〇六年九月)、北海道佐呂間町(同年十一月)、福井県敦賀市(〇八年七月)では竜巻など突風で死者も出ている。
竜巻は積乱雲の下に連なる激しい渦巻きの上昇気流で、突風の中で破壊力は最も大きい。発生の仕組みはよくわからないが、多くは台風や寒冷前線通過に伴う。
台風8号は沖縄地方を現在、西に進んでいるが、台風シーズン本格化で、本土に近づく台風も出現しよう。雨と共に竜巻の警戒も忘れてはならない。
気象庁は延岡市や佐呂間町の竜巻災害を機に、昨年三月から「竜巻注意情報」の提供を始めた。気象レーダーを順次、雲の動きや風向きまで観測できるドップラーレーダーに換え、竜巻の恐れのある都道府県に知らせている。
一〇年度からは対象地域を十キロ四方に細分し、よりきめ細かい発生の予想を「竜巻ナウキャスト」(仮称)として発表する。的中は一割前後の見込みで、精度の向上は今後の課題だが、不順な気候の時期は、まずこれらの情報に注意するよう心掛けたい。
竜巻情報が出た時はもちろん、肉眼で見ても大入道のような積乱雲が現れ、あたりが暗くなり、冷たい雨風や雷を伴う場合は、竜巻を警戒し被害を最小限に防ぐ行動が大切である。
異変を察知したら、屋外の作業やスポーツは中止する決断が必要だ。停車中の車も吹き飛ばされる恐れがあるので、車内といえども安全とはいえない。
なるべく堅固な建物に避難が鉄則である。地下の構造物ならさらに安全といえる。割れたガラスで負傷の可能性が高い窓際は避けるなど、その都度周囲の状況に応じた的確な判断が欠かせない。
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