原爆症認定申請を却下された熊本県の被爆者13人(遺族含む)が国に処分取り消しなどを求めた熊本訴訟第2陣の判決で、熊本地裁は新基準で既に認定されている3人を除く未認定の10人全員を原爆症と認定した。
一連の集団訴訟で国は19連敗となった。原告側が求めている早期救済を大きく後押しする司法判断であり、国は重く受け止めねばなるまい。
原爆症認定をめぐっては、昨年4月に一定の被爆要件を満たせば、がんなど5疾病を積極認定する新基準が導入され、今年6月には慢性肝炎・肝硬変と甲状腺機能低下症も積極認定の対象に加えられた。認定者は飛躍的に増えているが、それでも依然として訴訟が終結しないのは、厳しい「放射線起因性」の条件が課せられているためだ。
今回の判決では、10人の認定理由について「残留放射線量が過小評価されている可能性があり、病状などを総合考慮すれば、旧基準の算定より被ばく放射線量は、はるかに多い」と判断。肺気腫などの疾病も初めて原爆症と認定し、起因性の条件撤廃を強く促した。
河村建夫官房長官は6月、広島、長崎の原爆の日(6、9日)までに国としての救済策を示す意向を表明。政府内で調整を進めてきたが、解決への道筋はまだ定まっていない。
集団訴訟の全国原告・弁護団は昨日、原告約300人全員の一括救済案を舛添要一厚生労働相らに提出した。5日夕までの回答を求めており、同意が得られなければ交渉打ち切りも辞さない構えをみせている。
原爆投下から64年。被爆者の高齢化は進む一方だ。これ以上の猶予は許されまい。麻生太郎首相は今こそリーダーシップを発揮し、全面解決に向けた政治決断を下すべきだ。