上場企業の4〜6月期決算発表がピークを迎えた。最悪期は脱したものの、売上高や利益の絶対水準はなお低迷しているのが現状だ。世界経済の不透明感はまだ強い。長期の成長戦略を推進しつつ、足元のコスト削減にも手を抜かない、攻守両にらみのかじ取りが求められる。
日本企業の代表選手として、トヨタ自動車の4〜6月決算を取り上げてみよう。本業の稼ぎを示す営業損益は1948億円の赤字になった。前年同期の4125億円の黒字に比べれば天と地の差があるが、1〜3月期の6825億円の赤字からは大幅に赤字額が減った。
「前年同期比は大幅マイナス、前四半期比は改善」という傾向はトヨタに限らずパナソニックや日立製作所など他の有力企業にも共通する。1〜3月は在庫調整のため生産を大幅に減らし、売上高と利益が急減した。在庫水準がある程度低下した4〜6月は生産がやや回復した。
だが、安心はできない。在庫調整が一巡すれば、収益が多少上向くのは当然のことだ。海外に目を転じても、米フォード・モーターや米ゼネラル・エレクトリックの決算も同様の傾向を示している。日本企業の危機対応が海外のライバルに比べ、特段優れていたわけではない。
重要なのはこの先だ。経営効率化は引き続き重要な課題だ。危機に伴う需要の急減で、日本企業は過剰雇用を再び抱え込んだ。今年の経済財政白書によると、企業の実際の雇用者から最適雇用者数を差し引いた「企業内失業」は600万人前後に及ぶ。マクロ経済への悪影響が懸念されるが、個々の企業としてはリストラを進めざるを得ないだろう。
もう1つは厳しい中でも未来の成長に向けて布石を打つことだ。例えばハイブリッド車の人気が国内で高まっているが、ブームが世界に広がれば、日本車復活のテコになる。
日立製作所の子会社TOB(株式公開買い付け)も興味深い。変化に尻込みを続けてきた巨象が本当に変われるのか、注目したい。食品など内需産業でも再編統合でグローバル化を加速する機運が出てきた。
危機をどうくぐり抜けるかで「危機後」の競争力は左右される。経営者の力量が試される局面だ。