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社説2 北朝鮮の核で米は原則貫け(8/6)

 米国のクリントン元大統領が北朝鮮を電撃訪問し、金正日総書記と会談した。北朝鮮は拘束していた2人の米国人女性記者を解放した。記者の解放は喜ばしいが、北朝鮮の核やミサイル問題とは切り離すべきである。米政府が元大統領の訪朝をきっかけに、核問題で北朝鮮に安易な譲歩をしないよう求めたい。

 2人の米国人記者は3月、中朝境界付近で取材中、北朝鮮に拘束された。中央裁判所は12年の労働教化刑を言い渡していた。米国は即時解放を求めたが、北朝鮮は大物政治家の訪朝を要求、水面下で解放に向けた話し合いを続けていたという。

 北朝鮮がもともと、拘束した米国人記者を米朝の包括的な直接協議に結びつける交渉材料として利用する意図があったことは明白である。

 米元大統領の訪朝は、1994年6月に訪朝したカーター元大統領に続いて2回目だ。当時のカーター氏の訪朝は、北朝鮮が核開発を凍結する見返りに、重油支援や軽水炉提供を受ける同年10月の「米朝枠組み合意」の布石となった経緯がある。

 北朝鮮が今回、クリントン氏の訪朝を歓迎したゆえんだろう。北朝鮮はさっそく「北朝鮮と米国の理解を深め、信頼醸成に寄与する」と評価する報道文を発表した。

 北朝鮮は核実験やミサイル発射で世界を挑発し、6カ国協議にも不参加を表明するなど強硬姿勢を貫いている。ただ国連安全保障理事会の制裁決議履行を通じた対北朝鮮包囲網作りが進むなか、瀬戸際戦術の落としどころに苦慮していたようだ。

 米政府はクリントン氏の訪朝を記者解放のための「私的な活動」と説明するが、詳細は発表していない。金総書記との会談内容も不明なままだ。核問題や米朝関係に関連した密約は本当になかったのだろうか。

 クリントン国務長官は、北朝鮮が完全に核兵器計画を放棄するなら米朝関係の正常化や経済支援に応じると表明している。この原則は曲げるべきではない。北朝鮮が記者を解放したからといって、日本など同盟国の頭越しに包括的な米朝協議に応じるような妥協は避けるべきだ。

 核放棄で進展がないまま、北朝鮮が見返りだけを得てきた過去の二の舞いは繰り返してはならない。

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