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8月5日付 編集手帳

 〈土地の名前はたぶん/光でできている〉と、大岡信さんの詩「地名論」にある。駅の名前も、たぶんそうだろう。先日の小欄で、時刻表を旅する(たの)しみに触れた。沈んだ気分にふっと光が差し、()がともる心地がする、と◆まだ訪ねたことのない北海道・JR日高線の駅「絵笛」を例に引き、「童画の世界に誘われる」と書いた。それを読んで函館市の医師、水関清さんが思い出をお便りに(つづ)ってくださった◆11年前、4歳の坊やと旅をした時である。「え…ふ…え」。停車駅で坊やは、ひらがなの駅名標から一つずつ字を拾って声に出し、上から読んでも下から読んでも同じであるのを発見した喜びに、駅の名を連呼してはしゃいだという。その年の冬、坊やは事故で亡くなった◆坊やとの旅を童話の形にまとめた文章が同封されていた。その一節。〈のぶちゃんのこと、大好きだった…。とても会いたくて。いっしょに汽車に乗りたくて。もう一度会いたくて。一度だけでもまた会いたくて…〉◆時刻表をひらく。空想の駅に、きょうは雨が降っているらしい。駅舎の灯がにじみ、「絵笛」の文字が読めない。

2009年8月5日02時05分  読売新聞)
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