地方分権を支える市民活動もかつてない資金難。非営利のNPOバンクは、地域活動の若芽を育てる“干天の慈雨”のような存在になりつつある。芽を摘むような法改正なら、本末転倒だ。
NPOバンクは、既存の金融システムに対する“疑問符”だ。
何より金が借りにくい。実績がない非営利の活動が、一般の金融機関から立ち上げ資金の融資を受けるのは難しい。介護や環境保全など、地域が必要とする活動になかなか資金が回ってこない。預金者側にも、預金が何に使われるか分からないとの不安がある。
そこで、地域で金が、しかも誰からも見える形で回る仕組みを築くのが、NPOバンクの狙いである。趣旨に賛同する市民や団体から小口の資金を集め、年利1〜5%で、おおむね一千万円を限度に融資する。審査の際に結んだ「信頼関係」が担保の代わり。“預金者”にも利息はなく、自らの“志金”が地域のために役立っているという、満足感が見返りだ。
一九九四年に東京で設立された「未来バンク事業組合」を皮切りに、愛知県の「momo」など全国で十二組織が活動中で、融資累計は十六億円余、来春の設立を目指す石川県など全都道府県で設立準備が進んでいる。融資の“焦げつき”はほとんどないという。
その障壁が、来年六月までに完全施行される改正貸金業法だ。
多重債務者への過剰融資を防ぐためのこの法律が、NPOバンクにも適用され、借り手に借金がどれだけあるかを把握する信用情報機関への加入、情報提供が義務付けられる。NPOバンクの借り手は個人名義の場合も多く、住宅ローンなどへの影響を考えて、融資が進まなくなる恐れは強い。非営利のNPOバンクには、登録手数料だけで二十万円になるという加入経費も重い。
消費者金融とは原理が異なる新しい活動を「貸金業」でひとくくりにすべきではない。
融資先と「顔の見える関係」を築き、資金の使い道は出資者にきめ細かく報告するのがNPOバンクの特徴だ。多重債務を助長する恐れは低い。法の適用除外にするか、NPOバンクの全国組織を、借り手の信用を保証する「与信団体」として認めるべきだ。NPOバンク側には、さらに信用力を高める工夫が望まれる。
「地域でできることは地域で」が、世の中の流れである。流れにさおさすべきである。
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